インスリンとグルカゴンその3

今回のグルカゴンに関する記事はDaiabetes Solutionバーンスタイン医師の「糖尿病の解決」という本から一部紹介します。

バーンスタイン医師の糖尿病の解決―正常血糖値を得るための完全ガイド 単行本  – 2009/12リチャード K.バーンスタイン   (著),    太田 喜義 (翻訳)
Daiabetes Solution
p79より

中華レストラン効果

何年も前のことだが、ある女性患者から、毎日午後水泳に行った後なぜ血糖値が90mg/dlから300mg/dlに上がるか尋ねられたことがある。
私は彼女に、水泳前に何を食べたか聞いた。
「フリーの食事以外は何も」と彼女は答えた。
“フリーの食事”いうのはレタスのことだというのがわかった。
水泳前にどのくらいレタスを食べたか尋ねたところ、”頭”大だとわかった。
頭大のレタスは10gの炭水化物を含み、これは成人1型糖尿病患者で最大50mg/dlの血糖値をあげうる。
そうすると、彼女の残りの血糖値160mg/dl上昇(300-90-50=160mg/dl)はどうやって説明するか?

この説明は、私がよく”中華レストラン効果”と呼ぶものにある。
しばしば中華レストランの食事には大量のたんぱく質、あるいは遅効性の炭水化物食物、たとえば、モヤシ、チンゲンサイ、キノコ、タケノコなどが入っており、あなたを満足感で満たす。

なぜ、これら低炭水化物食物が血糖値にそれほど劇的な影響があるのだろうか?
小腸上部には、食後などに膨張した際に、血中にホルモンを放出する細胞が含まれる。
これらのホルモンは、食事の消化後に起こるであろう血糖値上昇をを防ぐために膵臓にいくらかのインスリンをつくるように命令を送る。
大量の食事は小腸の細胞をもっと広げ、それによって細胞は、相対的にもっと大量のホルモンを分泌するだろう。
膵臓から送られた極少量のインスリンでも血糖値を大きく下げ得るから、膵臓は同時にインスリンの余分と思われる効果を相殺するため、やや力価の弱いホルモン、グルカゴンを産生する。

あなたが糖尿病患者でインスリン産生能力が不十分であれば、インスリンは放出されないかもしれない。
しかしなおグルカゴンは放出するかもしれない。
これがブドウ糖新生とグリコーゲン分泌を促し、そして血糖値を上げるだろう。
このようにあなたが満腹と感ずるほど食べると、たとえおがくずのような消化されないものを食べたとしても、血糖値は大きく上がる可能性がある
1型糖尿病患者では、少量の非消化物を食べてもインスリン注射で補わなければ血糖値は上がるだろう

さらに複雑なことに、膵臓のベータ細胞は別のホルモンであるアミリン(amylin)を産生する。アミリンはグルカゴンの作用を阻止し、脳に満腹感を起こさせる。
アミリンはまた、排泄を遅くして過食を抑制する。
ベータ細胞が少ないか、あるいは欠如している場合、糖尿病患者は十分なアミリンを産生せず、その結果、患者は空腹のままで中華レストラン効果が誇張された状態になる。
本書の前の改訂版発行以後、アミリンの代替品が入手可能となり、過食の抑制に重要な役割を果たすこととなった。

ここでの最初の教訓は:「満腹になるな」である。
第二の教訓は:”フリーの食事”のようなものはこの世に存在しない。
あなたが食べるどのような固形物も血糖値を上げうるのだ。

 

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