JR上場3社の業績に減速感が出てきている。西日本旅客鉄道(JR西日本)などは27日、2017年3月期に連結営業利益が減少するとの見通しをそろって発表した。稼ぎ頭の新幹線運輸収入の鈍化が響く。2ケタ増益で過去最高の営業利益を更新した前期からの減速が鮮明になってきた。
「今期は前期と違って厳しい1年になる」。会見でJR西日本の中西豊執行役員はそう語った。17年3月期の連結営業利益は前期比3%減の1755億円を見込む。北陸新幹線の開業効果が一巡し、新幹線の運輸収入(単独ベース)は4355億円と前期を17億円下回る。
円高進行で訪日外国人(インバウンド)観光客の動向も見通しづらい。熊本地震の影響は業績予想には織り込んでいないものの、「観光旅行を手控える動きがマイナスになる可能性がある」と二階堂暢俊取締役は話す。
新幹線による利益貢献に一服感が出ているのはJR西日本だけに限らない。
東日本旅客鉄道(JR東日本)も北陸新幹線の反動減が出る。新たに開業した北海道新幹線が直結する東北新幹線は増収を見込むが、それでも「新幹線の運輸収入は横ばいになる」と森本雄司常務取締役は話す。東海旅客鉄道(JR東海)も運輸収入を1兆2947億円と横ばいとみる。JR東海は新幹線が単独ベースの運輸収入の約9割を占める。
JR3社にとって新幹線は収益率の高い「ドル箱」だ。JR東日本の場合、新幹線の売上高営業利益率は約4割で、山手線など在来線の1割程度を大きく上回る。3社は今期、特別損失がなくなる影響などで最終増益を確保する見通し。とはいえ、新幹線の運輸収入が伸び悩めば、「稼ぐ力」の鈍化は避けられない。
各社とも手を打ってはいる。JR東日本とJR西日本は共同で、北陸地方で広域の観光ルートを開拓するといった施策を講じる。北陸新幹線2年目の反動減を抑えられれば、業績上振れの余地はある。ただ、インバウンド需要の追い風などが強く吹いた前期までに比べ、収益環境は厳しくなりそうだ。