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印南敦史印南敦史  - ,,,,  06:30 AM

ネットとは違う良さがある。図書館の賢い利用法とは

ネットとは違う良さがある。図書館の賢い利用法とは

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以前ご紹介したことがある拙著『遅読家のための読書術』にも、「図書館を利用しよう」と書きました。ベストセラーから知られざる名作まで、さまざまな本と出会える図書館は、知識や思考力を身につけるための格好の場だからです。さまざまな知識を要求されるビジネスパーソンの情報源として、図書館を利用しないテはないわけです。

そこで参考にしたいのが、きょうご紹介する『図書館「超」活用術』(奥野宣之著、朝日新聞出版)。「最高の『知的空間』で、本物の思考力を身につける」というサブタイトルからも想像がつくように、図書館を活用して知識を高めようという意図に基づいた書籍です。

「インターネットがあるじゃん!」と言う人がいるかもしれません。(中略)しかし、もっと誰でもできて、時間もカネもかからない方法があります。
それが「近くの図書館に行ってみることなのです。
ネットだけでなく、図書館の中を歩き回り、五感を使いながら大量の本や資料を探し、情報を使いこなしていく。
そうすることで、ビジネスパーソンは自分の課題に対する"解"を自分で見つけることができる。このように私は考えています。
それはとりもなおさず「生き方を自己決定する」ということでもあります。
(「すこし長めのまえがき」より)

そう主張する著者はさらに、図書館には「3つの力」があると説いています。それは、「好きな本を借りて読む」以外の図書館の使い方として、まず押さえておくべき基本なのだといいます。



成果を生み出すための「ラボラトリー」


図書館は、ビジネスパーソンにとって格好の「ラボラトリー(研究室)」になると著者はいいます。業務を行ううえで必要な知識を一気に仕入れたり、苦手な分野を少しずつ克服していったりすることで、職業人としての自分の「売り」をつくっていくことができるわけです。また、さまざまな資料から情報を仕入れて研究し、企画などのアウトプットにつなげていくという使い方もできるでしょう。

たとえば人事異動で営業部から総務部に配属され、「ここでは会社法をしっかり理解しておかないと仕事ができないぞ」と感じたとします。こうした場合、大半の人は職場の人に教えてもらおうとするでしょうが、このように「◯◯がわからない」というときは、とにかく図書館へ行って見てほしいのだと著者は主張するのです。

そして、会社法の入門書や本格的に学ぶためのテキストなどを10冊ほど席に積み上げ、パラパラめくってみる。そのなかで「最初から最後までじっくり読みたい」「手元に置いていつでも参照できるようにしておいたほうがいい」と思うような本があったら署名をメモしておき、書店で購入するという手段。ただ借りて読むだけではなく、こういう使い方も図書館にはあるわけです。

仕事をしていて「気になる」「よくわからない」「もっと知りたい」と思うようなことがあれば、すぐに図書館に駆け込み、本をあさってみる。それが、「ラボ」としての図書館の使い方。もちろんインターネットでも、書かれている説明をざっと読んで、概要をつかんだりすることくらいは可能です。しかし体系的に理解して「使える知識」にするには、本を読んだほうが速いということです。

そしてインターネットではなく、図書館を使うことの大きなメリットは、「あいまいなまま研究をはじめられる」ということだとか。いいかたを変えれば、図書館で情報を探す際に「検索ワード」は不要。「◯◯について調べる」という具合に「課題」を言語化できなくても、「なんとなくわからない」「なにがわからないのかもわからない」という状態のまま、調べものがはじめられるわけです。

棚を見ながら歩き回っているうちに、想定していなかったような本を見つけることができ、それが新たな視点やアイデアにつながっていく。だから図書館に行けば、必ずなんらかのヒントが得られるということです。(29ページより)

図書館で知識の欠落を埋めたり、自分の潜在的なニーズに応じた研究をすることで、
「上司から『気が利かない』とよく怒られるんだけど、どうしたらいいの」
「他社からも一目置かれるような広報マンになりたい」
「企画書をもっと通して自分のやりたい仕事をやるぞ」
といった漠然とした課題でもじっくりとクリアして、満足のいく職業人生を送れるようになるのです。(33ページより)


決断を下すための「シンクタンク」


いうまでもなく「シンクタンク」とは、政府の政策立案や企業の意思決定を助けるための機関のこと。図書館にはあまり関係がなさそうにも思えますが、著者の考え方はちょっと違うようです。図書館は、仕事で意思決定したいときのシンクタンクになるというのです。

大事な局面で判断をしたり、今後の方針を決めたりするときは、本だけでなく、さまざまな辞書や事典、行政資料、統計、データベースなど、図書館にある資料をフル活用して「穴のない情報収集」をすることが重要。そうすることで、望みどおりの結果が得られる可能性は高くなるといいます。

ただし、ここでいう意思決定とは、「出張で泊まるホテルをどこにするか」というような、失敗してもたいしたことのないようなものではありません。「社長も出席する次の会議で、どちらのアイデアを提案するか」「この癖のある企画は、どこの会社に持ちかければ通してもらえるか」など、もっとシビアなもの。

同じように、日々の業務だけではなく、就職や転職、結婚、住宅購入、親の介護などで決断を迫られたときなどの「意思決定」も、この範疇に収まるといいます。あるいは、「地球温暖化の影響で異常気象が今後も増えてきたら、どこにマイホームを立てれば自然災害に遭わなくてすむか」といったスケールの大きな問題も。

つまりは重要な意思決定や、長期的に影響を及ぼす決断をする際に、図書館が「使える」ということ。「インターネットを使わずに本だけで判断しろ」という意味ではなく、ネットに加えて、本や雑誌、新聞、経済指標や行政資料、法令などの専門的なデータベースなど、「あらゆる情報源を使って考えよう」という考え方です。

ちなみにインターネット関連についていえば、あまり知られていないメリットが図書館にはあるといいます。多くの図書館はインターネットサービスを提供しており、しかも「有料データベース」が使えるということ。

たとえば図書館でよく使われている有料データベースとしては、日経新聞の過去記事や企業情報などが検索できる「日経テレコン」が有名。個人で契約すると最低でも月額8000円(2016年1月現在)かかりますが、図書館では収蔵されている本と同じ「図書館資料」扱いとなるため、どれだけ見ても料金はかからないというのです。

つまり、図書館にある情報をフル活用して「穴のない情報収集」をすれば、自分の「考えられる範囲」「想像のおよぶ領域」が広がるわけです。そしてその結果、より多角的で重層的な考えに基づいた意思決定ができるようになるということ。(33ページより)


可能性を広げるための「ゼミナール」


そして図書館は、社会人としての自分の可能性を広げていくための「ゼミナール」だとも著者はいいます。ご存知のとおりゼミナールとは、少人数で研究発表や討論をし、互いに啓発しあっていく教育法のこと。

つまり膨大な本が揃った図書館を歩き回り、さまざまな文献に触れていけば、古今東西の多種多様な考えと出会えることができるため、自問自答し、自分の世界を広げていけるというわけです。

たとえば現代は昔と違い、ひとつのスキルや資格で一生食っていくことは困難になりつつあります。ITの進歩によって、スキルそのものがすぐに陳腐化してしまうという現実もあります。そんななか、「今後もちゃんと稼いでいけるのか?」という不安を感じているビジネスパーソンは少なくないはず。

しかし、図書館を通じてそんな不安を克服し、自信を持てるようになる方法がひとつあると著者はいいます。それは、自分の「引き出し」を増やし続けること。

図書館の本棚を見ていけば、森羅万象あらゆることについての本があることに気づくはず。たとえどれだけニッチなジャンルであったとしても、図書館で本を漁ればなにかしら参考になるものが見つかり、勉強ができるわけです。「多様性」という点で本はもっともすぐれたメディアですが、その効力を存分に活用できるのです。

もちろん世の中には、英語教室も社会人大学院もありますから、それらを利用するという選択肢もないわけではありません。しかし、ひとりひとり異なるニーズに応じた自己学習ができ、しかもそれを「死ぬまで続ける」ことができるのは図書館以外にないということです。

なおインターネットと比較した場合、重要なポイントがあるといいます。思い浮かんだ「キーワード」で検索した結果としてヒットする情報は、「すでに想像できていた範囲」にとどまるということ。「想像の及ばないこと」についてはキーワードを思いつくことすらできないわけですから、想像の枠を超えた情報に出会うことができないわけです。その結果、インターネットでは「見たいものだけを見る」傾向が強くなってしまうということ。当然ながらそれは、視野を広げることにはつながりません。

さらに、インターネットとくらべた場合の図書館の強みは、施設や資料といった「実体」があること。図書館のなかでは、歩き回るだけでさまざまな情報が目に飛び込んでくるわけです。そのとき重要なのは「求めていると自覚している情報」だけではなく、「求めていると自覚していない情報」にも出会うことができること。いわばそれは、新しい世界が突如として目の前に開けるようなものであるわけです。(39ページより)

図書館を使うことで、これまでの自分なら思いもしなかったような着眼点を得たり、考えもしなかったようなことを考えられる。
これは、現代のような「これまでのやり方」が通用しない時代には、大きなアドバンテージとなります。(42ページより)




こうしたメリットを軸として、以後の章では、図書館を通じて「集中力」「発想力」「思考力」「教養力」を高めるための方法がわかりやすく解説されています。

ゴールデンウイークには本書を参考にして、図書館へ足を運んでみてはいかがでしょうか?


(印南敦史)

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