(英フィナンシャル・タイムズ紙 2016年4月25日付)
米メリーランド州ヘイガーズタウンの選挙集会で支持者らに語り掛けるドナルド・トランプ氏(2016年4月24日撮影)。(c)AFP/MOLLY RILEY〔AFPBB News〕
我々が欲しいものは何か? ドナルド・トランプ氏は群衆に向かってこう問いかける。「壁だ!」と群衆は返す。誰が壁の建設費用を払うのか? 「メキシコだ!」 さて、ここにトランプ氏が決して聞かないことがある。記録的な数で私に反対票を投じるのは誰か、という問いだ。その答えは「ヒスパニックだ!」というものになるはずだ。違う点は、最後の問答がほぼ確実に現実になることだ。
カリフォルニア州での最後の予備選に向けてカウントダウンが激しくなる中、同州の保守派層はまた別のことを自問するかもしれない。共和党がこのゴールデンステート(黄金州)で歩んだのと同じ道のりをたどることを望むか、という問いだ。
もし答えがノーならば――そしてノーであるべきだ――、なぜトランプ氏は6月7日の同州予備選の世論調査でリードしているのか?
米国の未来を垣間見たいのであれば、カリフォルニアに目を向けるといい。2014年、トランプ氏が大統領選への出馬を検討していた頃、同州はルビコン川を渡った。ヒスパニックの数が白人の数を超えたのだ。その2年前、カリフォルニア州はこれと関連した政治的な節目を突破した。史上初めて、全州を管轄する公職に共和党員が1人も選ばれなかったのである。
州知事のジェリー・ブラウン氏が民主党であるだけでなく、州議会の上下両院とも、民主党がざっと3分の2の議席を押さえている。共和党の人間が州知事に選ばれたとしても、議会が知事の拒否権を覆すことができる。ロナルド・レーガンとリチャード・ニクソンを生み出した州は彼らの率いた政党を、拒否権が通用しない少数派の座に追い落した。そして共和党はその座にとどまる可能性が高い。
トランプ氏は全国政党としての共和党のために似たような進路を描くことに最善を尽くしている。2012年の前回の大統領選では、ミット・ロムニー氏がヒスパニックの票の27%しか確保できず、ジョージ・ブッシュ前大統領の得票率を大きく下回った。これがロムニー氏の敗北の大きな要因だった。同氏はヒスパニックに「自主国外退去」するよう迫った。当時は彼の言葉が強硬に聞こえた。