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さらに軽くなった14型スリムモバイルノートPC「ThinkPad X1 Carbon」

ThinkPad X1 Carbon

 レノボ・ジャパンから登場した「ThinkPad X1 Carbon」は、14型液晶を搭載したスリムモバイルノートPCである。初代ThinkPad X1 Carbonは2012年6月に発表され、それから何度かモデルチェンジが行なわれ、今回で第4世代となるが、薄さと軽さを重視した14型液晶搭載クラムシェル型モバイルノートPCというコンセプトは変わらない。

 今回登場した第4世代のThinkPad X1 Carbonは、第3世代のThinkPad X1 Carbonに比べて10%の軽量化を実現するなど、さらに進化している。今回は、この最新ThinkPad X1 Carbonを試用する機会を得たので、早速レビューしていきたい。

14型ながら前モデルより10%軽い約1.18kgを実現

ThinkPad X1 Carbonの上面。筐体には軽くて丈夫なカーボンファイバーが使われている

 ThinkPad X1 Carbonは、その名の通り、筐体に軽くて丈夫なカーボンファイバー素材を採用したクラムシェル型モバイルノートPCである。第4世代となる最新モデルのウリは、2015年1月に登場した第3世代ThinkPad X1 Caronよりも約10%軽い約1.18kgを実現したことだ。本体のサイズは、333×229×14.95〜16.45mm(幅×奥行き×高さ)であり、最厚部の厚さも前モデルより1mm強薄くなっている。薄くても剛性は高く、角を片手で持ちあげてもたわむようなことはない。

上面右下のThinkPadロゴのiの点はLEDになっており、動作中は点灯する
上面左上にはLenovoロゴが刻印されている
ThinkPad X1 Carbonの底面
試用機の本体重量は実測で1,166gであった

第6世代Core iプロセッサーと16GBメモリ、NVMe対応SSDを搭載可能

 第4世代のThinkPad X1 Carbonは、PCとしての基本性能も高い。CPUやメモリ、ストレージ、液晶パネルなど、カスタマイズの選択肢も充実している。今回の試用機は、CPUとしてCore i7-6600U(2.6GHz、ビデオ機能内蔵)が実装されていたが、Core i7-6500U(2.5GHz、同)やCore i5-6300U(2.4GHz、同)、Core i5-6200U(2.3GHz、同)などの選択も可能だ。メモリ容量も試用機は最大の16GBとなっていたが、8GBや4GBも選べる。いわゆるモバイルノートPCでは、最大メモリ容量が8GBの製品も多いが、使い方によっては8GBでは足りないこともある。16GBまで実装できるThinkPad X1 Carbonなら、ヘビーな用途でも安心だ。

 ストレージは、128GB/192GB/256GB/512GB SATA SSDまたは256GB/512GB/1TB NVMe対応PCI Express SSDと、豊富な選択肢が用意されている。コストパフォーマンス重視ならSATA SSD、性能重視ならNVMe対応PCI Expressを選べば良い。特に、価格は高くなるが、1TB NVMe対応PCI Express SSDが用意されているのは、容量と性能の両方を重視したいという人にはありがたいだろう。なお、試用機のストレージは512GB NVMe対応PCI Express SSDであった。

ノングレアタイプの14型2,560×1,440ドットIPS液晶を搭載

 液晶は、14型IPSパネルを採用しており、解像度は2,560×1,440ドット(WQHD)または1,920×1,080ドット(フルHD)から選択できる。タッチパネルは非搭載だが、表面はノングレア加工されているため、外光の映り込みが抑えられており、長時間使っていても目の疲れが少ない。IPS液晶なので視野角も広く、液晶のヒンジも180度まで開く設計になっているので、膝の上に本体を置いて使う場合でも使いやすい。試用機には、2,560×1,440ドット表示の液晶が搭載されていたが、発色も鮮やかであり、コントラストも十分だ。液晶上部には、720pのWebカメラが搭載されており、ビデオチャットなどに利用できる。

液晶は14型IPSパネルであり、解像度は2,560×1,440ドットまたは1,920×1,080ドットである。試用機は、2,560×1,440ドットの液晶が搭載されていた
液晶上部には、720pのWebカメラが搭載されており、ビデオチャットなどに利用できる
液晶のヒンジはこのように180度開くことができる
ヒンジが180度開くため、膝の上などに置いても作業しやすい

キーボードとポインティングデバイスの使い勝手はトップクラス

 ThinkPadシリーズは、キーボードの使い勝手の良さに定評があるが、ThinkPad X1 Carbonもその伝統を受け継いでいる。最近のThinkPadではお馴染みの6列配列のアイソレーションタイプのキーボードが採用されているが、キーピッチは19mmとゆったりしており、キー配列も標準的である。適度なクリック感のあるキーボードで、快適にタイピングが可能だ。また、キーボードバックライトも搭載されているので、暗い場所でもミスタイプを防げる。

 ポインティングデバイスとしては、ThinkPadクリックパッドが搭載されている。ThinkPadクリックパッドは、一般的なタッチパッドとキーボード中央のスティックタイプのTrackPointから構成されており、どちらか、あるいは両者を併用して使えることが特徴だ。TrackPointは、指をホームポジションからあまり動かさずに操作できるので、慣れれば快適だ。

 また、パームレスト右側にタッチ式の指紋センサーを搭載。以前はスライド式センサーが採用されていたため、指紋認証時に指をスライドさせる必要があったが、ThinkPad X1 Carbonの指紋センサーは指先を軽くあてるだけで認証が可能であり、誤認識も少ない。

6列配列のアイソレーションキーボードを採用。キーピッチは19mmと余裕があり、キー配列も標準的で使いやすい
キーボードにはバックライトも搭載されており、暗い場所でもミスタイプを防げる
ポインティングデバイスとして、ThinkPadクリックパッドが採用されている。スティックとパッドの両方を利用できることが利点だ
パームレスト右側に指紋センサーを搭載。以前使われていたスライド式ではなく、タッチ式のセンサーである

独自ポートの「One Link+」やUSB 3.0×3を搭載するなどインターフェイスも充実

 インターフェイスも充実しており、USB 3.0×3、Mini DisplayPort、HDMI出力、ヘッドフォン端子のほか、独自ポートのOne Link+も用意されている。有線LANポートは本体には搭載されていないが、One Link+コネクタに接続する有線LAN変換アダプタが付属する。One Link+に、オプションの「ThinkPad One Linkドック」を接続することで、インターフェイスの拡張が可能だ。

 カードスロットとしてはmicroSDカードスロットを搭載。ワイヤレス機能としては、IEEE 802.11ac/a/b/g/n準拠の無線LANとBluetooth 4.1をサポートする。

左側面には、電源コネクタ、One Link+、Mini DisplayPort、USB 3.0が用意されている
左側面のポート部分のアップ
右側面には、ヘッドセット端子、USB 3.0×2、HDMI出力が用意されている
左側面のポート部分のアップ
One Link+を有線LANに変換するアダプタが付属している
有線LAN変換アダプタの有線LANコネクタ部分

無線LAN常時オンの条件で、実測10時間を超えるバッテリ駆動時間を実現

付属のACアダプタ。コンパクトで携帯しやすい

 ThinkPad X1 Carbonの公称バッテリ駆動時間は構成によって異なり、約9.8時間〜約7.5時間とされている。試用機の構成では公称バッテリ駆動時間は、約9.1時間とされているが、実際にバッテリベンチマークソフトの「BBench」(海人氏作)を利用し、1分ごとに無線LAN経由でのWebアクセス、10秒ごとにキー入力を行なう設定でバッテリ駆動時間を計測したところ(電源プランは「バランス」、液晶輝度は「中」)、10時間22分という結果になった。無線LANを常時有効にして、公称を上回る駆動時間を記録したことは高く評価できる。これだけ持てば、1日中、電源がとれない場所で持ち歩いて使う場合も安心だ。ACアダプタもコンパクトで軽く、携帯性は優れている。

出力20V/2.25Aの45W仕様である
ACアダプタの重量は実測で224gであった

NVMe対応SSDで快適な環境を実現

 参考のためにベンチマークテストを行なってみた。利用したベンチマークソフトは、「PCMark 8」、「ドラゴンクエストX ベンチマークソフト Ver.1.4K」、「ファイナルファンタジー IXV 蒼天のイシュガルドベンチマーク」、「CrystalDiskMark 3.0.3b」、「CrystalDiskMark 5.1.2」である。比較用として、レノボ・ジャパン「ThinkPad X1 Yoga」、日本マイクロソフト「Surface Book」、VAIO「VAIO Z(クラムシェルモデル)」、VAIO「VAIO S11」の値も掲載した。

 結果は下の表に示した通りで、PCMark 8のスコアは、同じCPUを搭載したSurface Bookよりも全般的に高い。さすがにGPU性能が重視されるドラゴンクエストX ベンチマークやファイナルファンタジーIXV 蒼天のイシュガルドベンチマークの結果は、単体GPUを搭載するSurface Bookの半分以下となっているが、ディスク性能を計測するCrystalDiskMarkの結果は、非常に高速だ。CrystalDiskMark 5.1.2のシーケンシャルリードQ32T1は、2,592MB/secを記録しており、従来のSATA 6Gbps対応SSDとは完全に別次元の性能である。PCMark 8のスコアがSurface Bookより全般的に高いのも、SSDの性能が効いているのであろう。

【表】ThinkPad X1 Carbonのベンチマーク結果

ThinkPad X1 Carbon ThinkPad X1 Yoga Surface Book(キーボード装着時) VAIO Z(クラムシェルモデル) VAIO S11
CPU Core i7-6600U(2.6GHz) Core i7-6500U(2.5GHz) Core i7-6600U(2.6GHz) Core i7-6567U(3.3GHz) Core i7-6500U(2.5GHz)
GPU Intel HD Graphics 520 Intel HD Graphics 520 GeForce Intel Iris Graphics 550 Intel HD Graphics 520
PCMark 8
Home conventional 2635 2590 2481 3002 2779
Home accelerated 3176 3167 2908 3602 3284
Creative conventional 2691 2694 2666 3015 2725
Creative accelerated 3890 4036 3753 4483 3655
Work conventional 2928 2794 2719 3002 3046
Work accelerated 4063 3995 3793 4246 4270
ドラゴンクエストX ベンチマークソフト Ver.1.4K
1,280×720ドット 最高品質 6796 7048 11424 10233 7083
1,280×720ドット 標準品質 6844 8339 12913 10875 8000
1,280×720ドット 低品質 6851 9644 15010 11693 9309
1,920×1,080ドット 最高品質 3109 3822 6409 7505 3967
1,920×1,080ドット 標準品質 4256 4950 7777 8747 5094
1,920×1,080ドット 低品質 5835 5979 9053 10188 6129
ファイナルファンタジーIXV 蒼天のイシュガルドベンチマーク
1,280×720ドット 最高品質 1713 1812 3746 未計測 未計測
1,280×720ドット 最高品質(Direct X9相当) 2284 2326 4727 未計測 未計測
1,280×720ドット 高品質(デスクトップPC) 1975 1976 4229 未計測 未計測
1,280×720ドット 高品質(ノートPC) 2288 2416 5407 未計測 未計測
1,280×720ドット 標準品質(デスクトップPC) 3280 3449 7785 未計測 未計測
1,280×720ドット 標準品質(ノートPC) 3273 3462 7779 未計測 未計測
CrystalDiskMark 3.0.3b
シーケンシャルリード 1,648MB/sec 1,848MB/sec 954.8MB/sec 1,658MB/sec 1515MB/sec
シーケンシャルライト 1,539MB/sec 1,535MB/sec 598.8MB/sec 1,587MB/sec 1237MB/sec
512Kランダムリード 1,224MB/sec 1,350MB/sec 535.5MB/sec 1,188MB/sec 1107MB/sec
512Kランダムライト 1,452MB/sec 1,517MB/sec 598.5MB/sec 1,521MB/sec 1206MB/sec
4Kランダムリード 51.05MB/sec 50.39MB/sec 42.93MB/sec 52.35MB/sec 43.57MB/sec
4Kランダムライト 139.8MB.s 133.1MB/sec 115.8MB/sec 147.7MB/sec 108.6MB/sec
4K QD32ランダムリード 555.6MB/sec 490.6MB/sec 612.7MB/sec 646.6MB/sec 320.0MB/sec
4K QD32ランダムライト 418.7MB/sec 400.6MB/sec 511.8MB/sec 391.5MB/sec 301.2MB/sec
CrystalDiskMark 5.1.2
シーケンシャルリードQ32T1 2,592MB/sec 2,519MB/sec 1,632MB/sec 未計測 未計測
シーケンシャルライトQ32T1 1,533MB/sec 1,542MB/sec 602.7MB/sec 未計測 未計測
4KランダムリードQ32T1 545.9MB/sec 500.3MB/sec 605.2MB/sec 未計測 未計測
4KランダムライトQ32T1 251.7MB/sec 248.1MB/sec 516.7MB/sec 未計測 未計測
シーケンシャルリード 1,854MB/sec 1,598MB/sec 931.7MB/sec 未計測 未計測
シーケンシャルライト 1,528MB/sec 1,546MB/sec 602.3MB/sec 未計測 未計測
4Kランダムリード 53.99MB/sec 52.80MB/sec 44.85MB/sec 未計測 未計測
4Kランダムライト 164.5MB/sec 144.6MB/sec 166.0MB/sec 未計測 未計測

タッチや2in1は不要だというビジネスユースに最適

 ThinkPad X1 Carbonは、オーソドックスなクラムシェルタイプのノートPCであり、最近流行の2in1ではないが、ビジネスユースでは、タッチ操作やタブレット機能は不要だというユーザーも多いことだろう。2in1が欲しいなら、同じThinkPad X1シリーズのThinkPad X1 Yogaがお勧めだが、クラムシェルオンリーのThinkPad X1 Carbonはより薄くて軽い。堅牢性も高く、携帯性も優れているので、タッチ操作は不要で、キーボードの使い勝手が優れたモバイルノートPCが欲しい人には最適なマシンと言える。

(石井 英男)