春の褒章 周防正行さんら受章

長年にわたって、その道一筋に打ち込んできた人や、芸術やスポーツの分野で功績のあった人などに贈られる「春の褒章」の受章者が発表され、映画監督の周防正行さんら704人と26の団体が受章することになりました。
ことしの「春の褒章」を受章するのは、▽人命救助活動で功績のあった人に贈られる「紅綬褒章」が6人、▽ボランティア活動で功績のあった人や団体に贈られる「緑綬褒章」が14人と26の団体、▽長年にわたって、その道一筋に打ち込んできた人に贈られる「黄綬褒章」が191人、▽芸術や文化、スポーツ、学術研究の分野で功績のあった人に贈られる「紫綬褒章」が16人、▽公共の仕事で顕著な功績があった人に贈られる「藍綬褒章」が477人です。

「黄綬褒章」は、神戸市で1日1万3000個を売り上げる豚まんの専門店を経営する曹英生さんらが受章します。

「紫綬褒章」は、日本アカデミー賞最優秀作品賞に選ばれた「Shallweダンス?」など、数多くの作品を手がけた映画監督の周防正行さんや、筑波大学教授で「オレキシン」という神経伝達物質を発見し、睡眠をつかさどる仕組みの解明の研究で知られる柳沢正史さんらが受章します。

「藍綬褒章」は、自動車メーカー、ダイハツ工業の会長で、平成23年に当時ガソリン車トップの低燃費で低価格の軽自動車を販売した伊奈功一さんらが受章します。

「春の褒章」の受章者は、来月11日と17日に、皇居で天皇陛下からお言葉を受けることになっています。

紫綬褒章を受章する周防正行さん

紫綬褒章を受章する映画監督の周防正行さんは、東京都生まれの59歳。立教大学在学中に、高橋伴明監督の助監督を務めて映画の世界に入り、昭和59年に映画監督としてデビューしました。平成4年、大学の弱小相撲部を舞台にした「シコふんじゃった」が大ヒット、続く「Shallweダンス?」では、社交ダンスの一大ブームを巻き起こし、日本アカデミー賞の最優秀作品賞など13部門を受賞しました。11年ぶりに手がけた新作映画「それでもボクはやってない」では、えん罪事件をテーマに、日本の司法制度に疑問を投げかけ話題となりました。

手がけた作品の着眼点のユニークさや、周到な取材に基づいたこまやかな描写などが芸術文化の発展に貢献したとして高く評価されました。

受章について、周防さんは「これまでの自分の仕事に対して評価をしてくださり、素直にうれしいです。今、日本に生きていて感じる驚きや怒りが、映画づくりの原動力になってきました。今後は、自分の築いてきた枠組みをはみ出さざるをえないような作品に挑戦したいです」と話していました。

紫綬褒章を受章する柳沢正史さん

紫綬褒章を受章する筑波大学国際統合睡眠医科学研究機構機構長の柳沢正史さんは、東京・練馬区の出身で55歳。筑波大学の大学院生だった昭和63年、血管を収縮させるたんぱく質「エンドセリン」を発見し、その研究成果は、肺の動脈が狭くなる肺高血圧症の新たな治療薬の開発につながりました。また、平成11年には「オレキシン」という神経伝達物質が睡眠に関わっていることを突き止めました。そして、この仕組みを使った初めての不眠症の薬の販売がおととしから日本やアメリカで始まっています。

柳沢さんは受章について、「とても名誉に思っております。自分の研究が患者さんの役に立つことはうれしく、やりがいを感じます。私の研究の原点は、今分かっていないことを知ることで、それをずっと追及していきたいと思っています。そして可能であれば、新たな知見が医学の分野で応用できるよう広がっていってほしい」と話しています。

紫綬褒章を受章する山本隆之さん

紫綬褒章を受章する奈良市のバレエダンサー、山本隆之さんは、大阪府出身の44歳。高校1年生のときにクラシックバレエを始め、平成5年、アメリカ・ニューヨークにあるバレエ学校に留学したあと、「ジョフリーバレエ団」に入団し、公演で主役などを務めました。平成9年に、日本で唯一の国立のバレエ団「新国立劇場バレエ団」が発足するとダンサーとして登録し、平成20年には、初めての「プリンシパル」と呼ばれるトップダンサーに選ばれ、バレエ団を率いてきました。

古典から近現代の振り付け師による作品まで、すぐれた舞台を展開する豊かな表現力は多くの観客を魅了し、平成25年には「芸術選奨文部科学大臣賞」を受賞しています。

山本さんは「まさか自分が受章するとは思わなかったのでびっくりしています。現在は、けがのため、第一線で活躍するのは難しい状況ですが、体の許すかぎり踊り続け、ダンサーとして表現していきたい」と話しています。