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スポーツ庁発足 五輪はゴールではない

 スポーツ行政を統括するスポーツ庁が発足した。2020年東京五輪・パラリンピックに向け、メダル獲得への期待が高まる。だが、誰もがスポーツを楽しめる環境を整えることも重要で、トップスポーツを強化するだけの組織にしてはならない。

     新組織は文部科学省のスポーツ・青少年局を母体に5課約120人体制でスタートする。初代長官には鈴木大地氏(48)が就任した。1988年ソウル五輪競泳男子背泳ぎ金メダリストという知名度に加え、日本水泳連盟の会長として強化だけでなく、全国各地を回って競技の普及や振興にも力を入れ、就任時に赤字だった組織の収支を2年間で黒字に改善した実績も評価された。

     5年後に向け、スポーツ界は金メダル数で世界3位以内という目標を課せられている。五輪でのメダル獲得が国家戦略として位置付けられているためで、スポーツ関連予算は年々増額されている。文科省は来年度の概算要求で過去最高となる約367億円を盛り込んだ。

     記者会見で意気込みを問われた鈴木氏は「まずは国際競技力の向上。日本選手が五輪などで活躍できるよう最大限サポートしていきたい」と述べた。スポーツ界が置かれている状況を踏まえての発言だろう。

     2年前、下村博文文科相は「日本のスポーツ史上最大の危機」と異例の声明を発表した。柔道女子日本代表チームや学校の運動部活動における指導者の暴力的指導に続いて、日本オリンピック委員会(JOC)加盟の競技団体による国庫補助金の不適切処理などが明らかになり、スポーツへの信頼は大きく損なわれた。

     五輪招致には成功したが、そうした負の体質が一掃されたわけではない。信頼を取り戻すためには、医科学的知識を備えた指導者の育成、ガバナンス(組織統治)の改善など地道な施策にもスポーツ庁は取り組まなければならない。

     スポーツ庁は当初、権限と財源が分散していたスポーツ行政の一元化や効率化を目指した。現状では老朽化で減少傾向にあるスポーツ施設を整備しようとすれば運動公園を所管する国土交通省との調整、連携は欠かせない。だが、各省庁の抵抗にあって厚生労働省の障害者スポーツ部門が移管されただけだった。これで縦割り行政の弊害を廃し、司令塔的役割を果たせるか。不安と課題を抱えたままのスタートとなる。

     鈴木氏は「5年後、10年後、スポーツ庁を作ってよかったと言われるような道筋を示していくのが長官の務めだ」とも述べた。その認識の下、課題を乗り越え、日本スポーツ界の基盤を整える施策を進めてほしい。五輪はゴールではない。

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