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シリア空爆 ロシアは米国と協調を

 1200万人にも上るシリア難民と国内避難民は、ロシアによる空爆をどんな思いで受け止めただろう。

     国連総会を機に行われた9月28日の米露首脳会談。シリア情勢に関してプーチン露大統領はテロとの戦いを最優先すべくアサド政権との共闘を呼びかけ、オバマ米大統領はアサド氏を「暴君」と呼んで退陣を求めた。見解は完全にすれ違った。

     2日後、ロシアはシリア領空爆に踏み切った。アサド政権と敵対する過激派組織「イスラム国」(IS)が標的だ。ソ連時代も含めてロシアがアラブ地域に軍事介入するのは第二次大戦後初めてとされる。

     ロシアの主張はこうだ。さまざまな組織で作るシリアの反アサド勢力にはISやアルカイダ系の組織も含まれる。たとえアサド政権を倒してもISなどが取って代われば、よりひどい状況になりかねない。むしろアサド政権に協力すべきだ−−。

     だが、今までアサド政権と戦ってきた勢力に、回れ右して別の敵と戦えというのは現実的ではない。しかもプーチン発言は揺さぶりの色が濃厚で、シリアなどの難民が欧州に押し寄せる危機的状況を利用して賭けに出た印象も否めない。今回の軍事行動には世界の目をウクライナ情勢から中東へとそらし、国際的孤立から脱却を狙う思惑も感じられる。

     ロシアには別の選択肢もあるはずだ。まずアサド大統領に退陣を促し、米欧や関係国と連帯してテロ組織と戦うことだ。アサド政権は多くの市民を殺傷した。火薬や金属片を詰めた「たる爆弾」を多用し、化学兵器を使った疑いもある。この政権は既に国民の信任を失っており、オバマ政権が言うように、「内戦前への復帰」はありえまい。

     ロシアの軍事行動はIS掃討の一点に限れば有益かもしれない。だが、アサド政権の側に立ったロシアの攻撃と、反アサドの米国が率いる有志国連合によるIS攻撃が共存しうるのか、米露の深刻な対立に発展しないかという懸念を禁じえない。今後ロシアが地上軍も派遣するようならシリア情勢は大きく変わる。

     何よりも大切なのは2011年から続く内戦を終わらせ、一日も早く、多くの難民・避難民の帰還に道を開くことだ。内戦の死者は既に22万人を超えたという。ロシアの軍事行動によって事態を複雑にさせてはなるまい。情勢悪化を防ぐためにロシアは米国と協調すべきである。

     オバマ大統領には強い指導力を望みたい。シリア領内のIS拠点爆撃は昨年9月に始まって1年になるが、夏以降はトルコやフランスも空爆を行い、有志国連合の幅が広がっている。米国は対露協議も含めて、この連帯を保つ努力をしてほしい。

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