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安保転換を問う 首相の説明 レッテル論争は不毛だ

 安倍晋三首相は、安全保障関連法について、国民に丁寧に説明して理解を広げるつもりが本当にあるのだろうか。安保関連法が成立して10日たつが、この間の首相の発言を聞く限り、疑問を持たざるを得ない。

     首相は通常国会の閉会時の記者会見で、法成立について「戦争法案といったレッテル貼りは根拠のない不安をあおろうとするもので、全く無責任だ」と語った。報道機関のインタビューでも同趣旨の発言をした。

     首相の説明は次のようなものだ。

     安保関連法は「戦争法案」ではなく「戦争を抑止する法案」だ。もし戦争法案なら、世界中から反対の声が寄せられるはずだが、現実には多くの国々から支持されている。戦争法案という根拠のないレッテルをはがしていきたい、と。

     いくつか誤解があるように思う。

     まず、反対論者がみんな戦争法案と言っているわけではない。

     安保関連法に反対する野党の中でも、民主党の多くや、維新の党は、戦争法案とは呼んでいない。

     私たちも戦争法案という言葉は使ってこなかった。

     戦争法案か戦争抑止法案か、という二者択一では、重要な論点が抜け落ちてしまい、生産的な議論にならないことを恐れたからだ。

     また、デモに参加した人たちも、単純にレッテルを貼り、不安をあおろうとしたわけではない。

     背景には、多様な反対や疑問があった。11本の安保関連法のどこに着目したかは、人それぞれだった。

     しかも、法の内容そのものへの反対だけではなかった。国会での政府答弁への不満もあれば、安倍政権の強引な進め方への反発もあった。中には賛否を決めきれず、通常国会での拙速な成立に反対する人もいた。

     首相は、国民に丁寧に説明すると言いながら、反対論を十把一からげにして、戦争法案というレッテル貼りだと決めつけているように見える。そして、いつもと同じように「国民の命と暮らしを守るため」という抽象的な説明を繰り返すだけだ。

     これでは皮肉にも、首相のほうがレッテル貼りをしているように見えてくる。ますます国論が二極化しかねない不毛な議論だ。

     国民が首相に求めているのはこんな説明ではないはずだ。

     法は30日に公布され、来年3月末までに施行される。首相は、現在の国際情勢の中で日本が置かれている状況や目指すべき方向性を、政治家らしい言葉で語ってほしい。

     そのうえで、法の一つ一つがどう寄与するのかを、具体的なケースを挙げてわかりやすく説明すべきだ。

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