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通常国会閉会 極論の応酬に終止符を

 戦後最長の245日間におよんだ通常国会がきのうで閉会した。

     昨年暮れの衆院総選挙を経ての国会だった。アベノミクスの継続を訴えて政権を維持した安倍晋三首相だが、「改革断行国会」と名付けた割には経済再生の影は薄かった。

     むしろ安倍首相が最も執着したのは、自衛隊の活動領域を飛躍的に広げる安全保障関連法の成立である。日本の安保政策は、集団的自衛権の行使容認を軸に一線を踏み越えた。

     安保一色になったこの国会で際立ったのは、安倍政権と野党の主張との極端な開きだ。

     抑止力の強化を最優先させようとする政権側と、法体系の安定にこだわる野党側の議論はどこまでもかみ合わず、最後は数に勝る与党によって強引な決着が図られた。原発政策や教育政策でも、非妥協的で全面対決型の議論が繰り広げられた。

     こうした国会は理想の姿からほど遠い。国会は国家意思を決める場であるとともに、主権者たる国民に政策の理解と共有を促す場としても機能しなければならないからだ。

     議論を不毛なものにしている原因は、与野党双方にある。

     一義的には安倍首相のイデオロギーや政策スタンスが、過去の自民党政権と比べて大幅に右へ寄り過ぎていることを指摘せざるを得ない。

     本来、保守主義は復古主義とは異なる。穏健な保守主義であれば、現実的なリベラリズムと重なり合う部分が多いはずだ。なのに、自分たちの価値観に固執し過ぎるため、野党との妥協の余地がなくなる。

     野党第1党の民主党も、安倍政権との対抗上、立ち位置をより左に取る傾向が見受けられた。このため、反対の論陣は張れても、政権に修正を迫るまでには至らなかった。

     与野党とも競合する相手との違いを強調しようとするあまり、主張が両極端に分かれてしまうのは、小選挙区制の弊害でもある。

     加えて、小選挙区制は得票の差よりも議席数の差を大きくする特質があるため、「てこの原理」で特定の主義主張が国会で実態以上に優勢になる傾向がある。

     このままでは国会がますます多数党による一方的な「表決場」と化し、民意との開きが埋まらなくなってしまうのではないか。

     政治の「中庸」とは、単に足して二で割るのではなく、極論を排して公正を保とうとする考え方だ。出発点が異なるのだから、各党が自己に謙虚でなければ、与野党にまたがる合意など生まれようがない。

     国会が健全性を取り戻すには、まず自民党が中庸の精神で臨むべきだろう。長い目で見れば、それが国政を安定させる近道になる。

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