TPP閣僚会合 大局的判断で合意急げ
環太平洋パートナーシップ協定(TPP)の交渉参加12カ国による閣僚会合が来週、米アトランタで行われる。大筋合意が見送られた前回会合から約2カ月ぶりの再開だ。
アジア太平洋地域の巨大な自由貿易圏誕生に向け、課題は絞られている。一方、各国の政治日程を踏まえると残された時間は少ない。この機を逃さずに合意を目指すべきだ。
課題の一つは、通商ルール整備の一環である新薬開発データの保護期間だ。製薬大手が多い米国が12年を主張するのに対し、安価な後発薬を普及させたいオーストラリアなどは5年以下を求めている。
もう一つは乳製品の市場開放だ。酪農国のニュージーランドが日米などに大幅な輸入拡大を要求し、反発を招いている。ほかに、自動車では、域内で生産された部品をどのくらい使えば関税を優遇するかという「原産地規則」を巡って、日本とメキシコなどとの間に溝が残る。
いずれも国益に密接に絡んでいて、決着させるのは容易ではない。だが、今回合意できないと、交渉が一段と困難になるのは必至だ。
交渉参加国のカナダは来月19日に総選挙がある。与党の苦戦が予想され、政権が交代すると、これまでの交渉がほごにされる恐れもある。
また、米国は来年秋に大統領選、日本も来年夏に参院選を控える。交渉が長引くほど譲歩しにくくなる。
甘利明TPP担当相は「(今回を逃すと、合意に)年単位の時間を要する危険性がある」と懸念する。しかし、漂流させてはならない。
TPPは貿易や投資で高水準の自由化を目指しており、成長著しいアジア太平洋地域の一段の活性化が見込める。域内の通商ルールも構築され、法の支配が不十分な中国へのけん制にもなる。
人口減で国内市場が伸び悩む日本にもアジア太平洋地域の活力を取り込む好機となる。日本経済は4〜6月期の実質成長率がマイナスに陥り、もろさを露呈した。TPP早期妥結の重要性は増している。
世界経済も中国の景気減速で不透明感が強まっている。TPPがまとまれば、日欧や米欧など大型の貿易自由化交渉の進展も促し、世界全体の成長に資することが期待される。
交渉参加国に必要なのは、域内全体の利益を優先する姿勢だ。TPPが実現すると、より大きな国益につながるはずだ。各国は大局的な判断で歩み寄りを図ってほしい。
とりわけ日米の責任は重い。安倍晋三首相は25日、「今回の会合を最後にしたい」と述べた。米国産コメや日本製の自動車部品など2国間の課題を早期に決着させ、交渉全体に弾みをつけるべきだ。