規制委発足3年 避難計画を審査対象に
東京電力福島第1原発事故を教訓に、高い独立性や透明性を掲げて設置された原子力規制委員会が、発足からまる3年を迎えた。
新規制基準に基づく原発の安全審査では、電力会社に厳しい地震想定を求めるなど、安全を最優先に取り組んできた姿勢は評価できる。
だが、原発事故に備えた住民の避難計画は規制委の審査の対象外で、自治体任せになっている。規制委は「人と環境を守る」という使命を果たすため、一層の体制強化に取り組んでほしい。
規制委設置法には付則で3年以内の見直し規定があり、政府や与党自民党が検討を進めてきた。
焦点となったのが、原発の運転期間を原則40年とし、規制委の審査に合格すれば最長20年間延長できるルールと原子力防災体制の見直しだ。
原発推進派議員からは「40年に科学的合理性はない」などの意見が出ていた。しかし、延長の審査はまだ始まったばかりで、政府は40年原則を見直さないことにした。老朽原発は延命を図るより廃炉にするのが筋であり、妥当な判断である。
原子力防災体制の見直しについては、昨年10月に自治体の原子力防災対策を支援する新組織を内閣府に設置したことなどで、よしとされた。これには大いに疑問がある。
8月に再稼働した九州電力川内原発1号機(鹿児島県)では、周辺9市町と県が避難計画を含む緊急時の対応策を策定した。だが、避難訓練の実施は今年末になる。本来なら再稼働前に訓練をし、計画の実効性を点検すべきだった。順序が逆になった根本的な原因は、避難計画が規制委の審査の対象外だからだ。
米国では、原発の緊急時の防災対策が米原子力規制委員会(NRC)の審査対象となっている。原発が立地する自治体などは、原発の初稼働前に避難訓練をする。結果を踏まえてNRCが運転の可否を判断する。
日本でも、避難計画を規制委の審査対象とし、実効性に欠ける場合は原発の稼働を認めないよう政府は関係法令を改正すべきだ。
規制委には、事務局である原子力規制庁の人材確保を図るとともに、国民とのコミュニケーション能力も高めてほしい。
安全審査に合格した原発の地元説明会では、自治体から要請があれば規制庁職員が出席するだけで、5人いる委員が出たことはない。新潟県の泉田裕彦知事は先月、全国知事会と規制委との定期的協議の場設置を田中俊一委員長に要請したが、規制委はまだ回答していない。
規制委は原発の安全性を保証する組織ではないものの、審査に臨む姿勢や判断の根拠を委員自らが市民に説明してこそ信頼も高まるはずだ。