新共通テスト 大学個別入試の充実に
現行の大学入試センター試験に代わる新たな共通テスト「大学入学希望者学力評価テスト」が2020年度に導入される。大学入試改革論議を進めてきた文部科学省の専門家会議が、中間報告の柱に挙げた。
このテストは、問題をめぐる思考過程や判断力などを重視する。試行を経て24年度には、コンピューターによる出題・解答方式(CBT)や記述式問題の本格導入を検討する。
実際どのような形の試験になるのか、条件整備はどう進めるのかなど、これから詰めていくべき課題は山積している。
そして肝心なのは、各大学がこのテストで受験生の学力評価をするのにとどまらず、適性や討論の力、高校での活動など多面的な評価で独自の個別選抜を工夫することだ。
分断している高校と大学教育の連続的なつながり(高大接続)を構築し、1点刻みでふるいにかけるような知識中心の入試を改める−−。それが今の改革論議の出発点だった。
目玉ともいえる新共通テストはセンター試験と同様、50万人を超すマンモス試験になる。CBTは音声や動画なども活用でき、多様さ、効率性で、従来のペーパーテストではできない出題が可能だという。
一方、受験生の端末機器をどう整えるか。予算的な見通しも判然としない。機器のトラブル対応やバックアップに不備があっては、試験の公平性、信頼性は大きく揺らぐ。
公平という意味では、受験生のコンピューターを扱う習熟度に大きな「格差」がないようにすることも要件ではないか。
1979年からの共通1次試験、90年からのセンター試験など、大学入試制度は「猫の目」にたとえられるほど変転し、しばしば目的と現実の隔たりを生じた。
多様な組み合わせを期待したセンター試験だが、大学によっては受験生確保のため受験指定科目を少なくし、あるいは、センター試験だけで判定して個別の2次試験をしない大学もある。学力低下の背景でもある。今回の改革を大学個別の選抜のあり方を見直す機会としたい。
具体的イメージを欠く理念はしばしば空転する。
その意味で中間報告は具体像が足らず、理解が得られないのではないか。例えば、思考力や判断力などを試す出題。教科・科目を融合した問題。まだつかみどころがない。
重要なのは、他の教育政策と同様、社会に開かれた議論と共通認識の形成だろう。
小中高校教育にも波及するような今回の改革は、とりわけ教育界にとどまらず、社会に広く理解されることが大切だ。