メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

救急車 適正な利用促す工夫を

 救急車の出動件数が年々増加を続け、昨年は過去最多の約598万件に上った。10年前と比べると約2割の増加だ。今夏も熱中症で搬送された人が相次いだ。

     出動件数の増加に伴い、救急隊の現場への到着や病院収容までの時間が延びている。緊急性の高い人への対応遅れを心配する声が出ている。

     だれもが利用できる救急車は、急病人やけが人への迅速な医療を支える大切な社会資源だ。適切な活用を社会全体で推し進めたい。

     救急搬送された人のうち65歳以上の高齢者の割合は、1989年に約23%だったが、2013年には約54%に上昇した。社会の高齢化が救急車の利用を押し上げている。

     救急搬送された人の約半数が入院を必要としない軽症者だった。

     財務相の諮問機関「財政制度等審議会」は6月、こうした軽症者のデータを示し、「軽症の場合の救急サービスの有料化について検討すべきだ」と財務相に提言した。欧米の一部で有料化している例も挙げた。

     だが、軽症でも救急搬送が不要とは必ずしもいえない。餅をのどに詰まらせた高齢者の手当てが遅れれば命にかかわるが、すぐ病院に運び餅が取れればそのまま帰宅できる。指を切断した場合も、応急処置で縫合すれば入院しないで済む。そうした事例は軽症に数えられるからだ。

     有料化の議論の前に、現状で改善を図るべきことが少なくない。

     たとえば、病院が他の病院に患者を転院させる際に救急車を利用するケースが全国で年間50万件近くに上る。その中には緊急性に欠ける場合が少なくないという。

     地域医療の中核を担う主な病院には、病院用の救急車が備えられている。そうした車両の活用など病院側の意識改革が必要だろう。

     救急車を呼ぶか迷う症状の場合、緊急性を判断する救急相談センターを医師会などと連携して運営している自治体がある。現状では東京都や大阪市、札幌市など一部に限られている。もっと広めたい。

     慢性の病気があったり、要介護だったりする高齢者について、かかりつけ医に相談する体制を整え、地域で把握しておくことも有効だ。救急車に頼るべきか判断がつきやすい。

     「地域包括ケアシステム」と呼ばれるこうした仕組みには、近隣住民が日常的に高齢者を見守るなど協力が必要だ。一部地域で実践されているが、各地で機能すれば救急医療への負担はだいぶ軽減されるだろう。

     タクシー代わりなどの利用も指摘される。東京消防庁管内で1年間に30回以上救急要請した人は100人以上に上る。非常識な利用がやまないようならば対策が必要だ。

    毎日新聞のアカウント

    話題の記事

    アクセスランキング

    毎時01分更新

    1. 都知事の海外出張費 首都圏3県知事から「高過ぎる」批判
    2. 前田健さん死去 「ロンハー」で体調不良も診察受け収録続けていた
    3. 舛添都知事 公用車で別荘へ…湯河原、1年に48回
    4. 舛添知事 経費の内訳を公開 昨秋のパリ、ロンドン出張 /東京
    5. 丸山議員発言 舛添都知事が苦言「レベル低すぎる」

    編集部のオススメ記事

    のマークについて

    毎日新聞社は、東京2020大会のオフィシャルパートナーです

    [PR]