【ニューヨーク=稲井創一】米格付け会社スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)は26日、石油メジャー最大手エクソンモービルの信用格付けを最上位の「AAA(トリプルA)」から「AAプラス」に1段階引き下げたと発表した。原油安で業績が悪化し、現金創出力が限られることなどを格下げの理由にしている。
米メディアによると、エクソンは最上級の格付けを少なくとも60年間以上、維持していたという。この結果、最上位のトリプルAを確保する企業はマイクロソフトとジョンソン・エンド・ジョンソン(J&J)の2社のみとなった。強固な財務基盤を誇ってきたエクソンだが、長引く原油安が収益環境を悪化させている。
S&Pは今年2月にエクソンの格付けを引き下げ方向で見直す対象にすると発表していた。これに対し、エクソンのレックス・ティラーソン最高経営責任者(CEO)は「今回の原油安局面よりも財務的に厳しい場面が過去にあったが、最上位の格付けを維持してきた」と述べ、見直しの動きをけん制してきた。
S&Pは26日の発表文で「配当、自社株買いや投資などへの資金需要が継続的に現金収入を上回り、近年で負債は倍以上に膨らんだ」と指摘した。エクソンの2015年12月期の純利益は161億ドル(約1兆7800億円)と前の年に比べ50%減となった。ただ、シェブロンや英蘭ロイヤル・ダッチ・シェルに比べて業績は底堅い。
エクソンは負債を減らすよりも株主還元への資金活用を重視しており、こうした財務戦略も格下げ要因になったとみられる。26日の取引時間中に格下げは発表されたが、エクソン株は0.3%高で終えるなど目立った売り材料にならなかった。