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居場所のない子 生命や健康が危ない

 勉強についていけず不登校になり、親の暴力やネグレクト(養育の放棄)で自宅にもいられず、ネットカフェやファミリーレストランで過ごす子どもたちがいる。潜在的なホームレスとも言える。貧困や周囲からの孤立が子どもを危機に追いやっているのだ。

     「子どもの貧困率」は過去最悪の16・3%、貧困家庭の子どもは320万人にも上る。ひとり親世帯の貧困率は54・6%と深刻さが際立っている。パートを掛け持ちでするため子どもの世話をする余裕がないのだ。親の借金返済のため早朝から深夜までアルバイトを掛け持ちでする子も珍しくない。子どもを守る最底辺の安全や安心が底割れしている。

     政府は民家などを使って子どもに学習支援や食事を提供する「居場所」を2019年度までに年間50万人分用意する支援策をまとめた。年末までに財源確保を含め具体的な政策を決めるという。生命や健康の危機にひんしている子どもを救う緊急対策が必要なのは言うまでもない。

     これまでにも、子どもの貧困対策推進法(13年)、子どもの貧困大綱(14年)などに教育や生活の支援、保護者に対する就労支援は盛り込まれてきた。ただ、具体性に乏しく財源の裏付けがないため、現に困窮している子どもに手が届いていないのが実情だ。それを繰り返してはならない。

     「居場所」作りは小さなNPOや自治体が独自に始めて各地に広がってきた。お金も人もなくボランティアの善意でかろうじて支えられているところが多い。国民全体で課題を共有し、地域の人々を巻き込む仕組みを作り、公的な財政支援も厚くしなければならない。

     子どもの外見からは困窮状態にあることがわかりにくいことも対策が後手に回ってきた一因だ。貧困大綱などでは、学校を中心に関係機関が早期支援をすることも打ち出された。給食の異常な食べ方や衣服の汚れなど、学校が子どもの困窮の端緒を見つけやすいからでもある。

     しかし、日常の仕事に教師は忙殺され、スクールソーシャルワーカーも試行的に行われている地域が多いため人数が限られている。非正規雇用が多く、週に2日程度学校に来ても困窮状態の子どもに気づき、継続して支援することは難しいだろう。学校と福祉団体やNPOとの連携は進んでいない。

     小中学生の不登校は約12万人に上る。高校の中退者も毎年10万人近くいるが、その7割以上が仕事をしていないかアルバイト程度の仕事しかないとも言われる。貧困や孤立は身近なところに広がっている。早急な対応が必要だ。

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