あまりに急だった日本を代表するカリスマ経営者の退任劇。話題を呼んだ会見から数日後、本誌記者は渦中の会長宅を訪ねた。その口から洩れた言葉には、「謀略」「面従腹背」への怒りが溢れていた。
「嘘が一番、許せない」
100坪以上はある邸宅が立ち並ぶ都内屈指の高級住宅地には人通りもなく、ひっそりと静まり返っていた。4月12日19時。本誌記者が鈴木敏文セブン&アイ・ホールディングス会長の自宅のインターホンを鳴らすと鈴木氏の妻と思われる女性が応答したが、同氏と話したい旨を述べると、すぐに本人が出た。
—週刊現代の記者です。インタビューのお願いに上がりました。
「なんですか。ああ、おたくの雑誌はね、こないだ書いた記事は、まったくデタラメが書いてあるからさ、取材は受けられないよ。ぜんぜんデタラメ書いてるんだもん」
硬い声色で、すぐにインターホンは切れてしまうが、再度鳴らすと、また本人が対応した。
「あのね、デタラメ書いてあるものはしょうがないでしょう。その、要するに、言ってもいないことを言ったなんて書いているし、こっちが迷惑するんですよ」
—お叱りの言葉も含めて、きちんと話を聞かせてもらえないでしょうか。
「じゃあ一言だけ、いま出て行って話をするよ」
インターホンが切れて1分ほどして、ワイシャツにグレーのスラックス、えんじ色のカーディガンを羽織った鈴木氏本人が出てきた。外は風が冷たく、少し寒そうな様子だった。
「あのね、要するに、息子(鈴木康弘取締役執行役員)が社長になるなんていうのは、まるっきり嘘で、誰もそんなこと言ってない。まるきりそんなことはありえないし。
僕はね、今までいろんなところから、おたく(講談社)からも本を出しているし色々やっているけれども、一番、そういう嘘とかなにかっていうことは、僕の人生観では許さないの。だから、今回の問題だって、スパッと引いたわけ。そういうことだから」