都市伝説】"メンヘラ巨乳"は幻の生き物なのか?【からのケミストリー】

あらかじめ失われた乳房の悲しみ。それを誰より深く受け止めるのは、そう、メンヘラなのです。その寂寥感と向き合うのがメンヘラの半生と言っても過言ではないかもしれなくもなかったりするのやもしれず。
しかし、スイスイさんは神秘の体験によって、失われた聖櫃を取り戻しました。あんなに恋焦がれた「豊満とはなんだったのか」。そんな哲学的な問いに、あなたを誘うMMH。胸に手を当て、むしろ両手で鷲づかみにしてお楽しみください。

メンヘラに巨乳はいない。
ほとんどの亀が足が遅く、
ほとんどのペンギンが空を飛べず、
もう島田紳介は芸能界に復帰しないのと同じで、
"メンヘラで巨乳"は存在しない。

でも仮に、その法則が覆ったらどうなるだろう。
亀が時速100キロで走れるようになったらどこを目指す?
ペンギンが山よりも高く飛べたら何を見下ろす?
完全復帰した島田紳介は、どんな冠番組をやる?

繰り返すが、メンヘラに巨乳はいない。いてもCカップまでだ。
逆に言うと巨乳は、どれだけ辛く悲しいことがありこじらせたくなっても、常に巨乳だ。
こじらせようにもこじらせられない。絶対にメンヘラになることはできない。
ただ万が一”メンヘラ巨乳”を発見したら、それはUMAであり世界衝撃映像であり、地球が一丸となって守るべき存在。

常に自分の胸の控えめ感に卑屈な思いを感じてきた生物代表メンヘラ。
そんなメンヘラが爆発しそうなほどの巨乳を手に入れてしまったらどうなるのか。

私の場合は、まるで上半身裸でしょうか?と感じさせるほどにハリウッド気分で露出に走った。

今回はメンヘラ×出産で、私個人に起きた奇跡のケミストリー(化学反応)についてのお話をはじめます!

まず出産すると、メンヘラ的には二度と今世では手に入らないと思っていたほど尊い存在であるところの「巨乳」を手にいれる事ができます。男子諸君には事の重大さが伝わらないかもしれない。これはアンパンマン大好きな子供の自宅自体が、次のアンパンマンミュージアムの建設地になるくらいに半端ないことで、まさに「夢みたい!」なことである。

「胸の谷間って、都市伝説ですよね?」
と思っていたのに、自分の胸にそれが現れる魔法。
産後、乳首が伸びたり、色が濃くなってしまうのもまったく気にならないくらいに、ただそのサイズ感、存在感。迫力に圧倒されるのである。
急いで階段を登るときなんて、胸が揺れて、痛い!軽く押えてないと、登れな—い(嬉)!!!!のである。

私は、必要以上に階段を利用した。必要以上に駆けた。必要以上に胸を張った。必要以上に自撮りした。必要以上に前に屈んだ。必要以上に露天風呂から上半身を出した。さらにそれまで一切「揺れ」の要素がなかったので「ブラって乳首が透けないためだけに存在してますよね」と思ってたんだけど、ちゃんと必要だったんだと、ブラにも感謝できるようになったこの心の広大さよ!そう、おっぱいは肉体だけの問題ではない。気持ちも豊満にしてくれる。オカリナも盾もいらない!私がゼルダだったらアイテムはおっぱいだけでいい!!!!

こんな夢みたいな現象と同時に、メンヘラの(というか私の)出産にはもうひとつ、予想もしないケミストリーが発生したのです。それは「記憶喪失」。出産すると、とにかくあらゆることが記憶できなくなり、覚えた瞬間から忘れていくのだった。携帯番号くらいの長さになると数秒でも覚えていられないようになり、とうとう市外局番も無理。日々、脳の力が低下するのをグングンと感じる。それの何がケミストリーかというと、なんと、メンヘラにとってあんなにも大好物であった「昔の思い出」までもが思い出せなくなるのだった。

THE YELLOW MONKEYの名フレーズにこんなものがある。

「思い出だけが、性感帯」

そう、まさに吉井和哉様が歌うように、我々には思い出が何より宝物だったはずなのに、私は、あんなにも語っていた「人生でもっともキュンとした、深夜の海で彼に言われたあまりにも見事な名言!」「自分が彼女だと思ってたのに実は私が浮気相手だったと知った時に、私が相手に言ったあまりにも最高の名言!」も、思い出せなくなっていたのだった。100回は繰り返していた言葉を忘れる衝撃。

しかもこの現象はおっぱいとつながっていて、おっぱいをあげればあげるほど、とくに授乳真っ最中に、頭の中がボーっとして記憶がなくなっていくのだった。わたしは途中から、赤ちゃんが、おっぱいとともに私の記憶や思い出や大切だった物を飲んでいるのでは?という気分になった。もう戻らない大切な黒歴史、そう「いにしえ」を、新しい命がゴクゴクと飲んで大きくなる。つまりは私の生成物だけでなく、かつての私と誰かとのメモリーまでもが新しい命の一部になる!!!メモリーが愛のメモリーに!母乳の松崎シゲル化!

大切な思い出を「忘れてしまう」というのは、本来ネガティブな現象に感じられるのに、自分が一枚一枚古い皮を脱ぎ捨てて脱皮をしていくような感じだった。

妊娠で増えきった体重はみるみる減っていきカラダは軽くなるし、食べられなかったものが大好きになった。苦手だったジャンルの映画にものすごく感情移入したり、好みの服もすこし変わった。

いつも頭はフワフワとして、記憶は曖昧でゆるふわ。だけどグングンと、あたらしい価値観や目の前の赤ちゃんとの新鮮な記憶が身体中に刻まれる。さらに巨乳。それまでの自分が一掃されるよう。

なんだか、どこか現実離れした、完全無敵のきらきらプリンセスに大変身したようなキブンだった。


だけどすべての魔法が解けるように、巨乳も終わりを迎えます。

亀は足が遅い。ペンギンは空を飛べない。島田紳介は沖縄に住んでてたまにミヤネ屋にコメント寄せるのみ。それが現実。やはり、メンヘラは巨乳じゃない。

出産して1年もする頃、気付けば我が胸は、風船が萎む様に、炭酸の抜けた飲み物のように、夏の終わりのように、シュア—と小さくなり、かくれんぼをはじめた。残る、胸元のあいた服。残る、露出癖。残る、自撮り写真。

もとの胸に戻った。
それでもなぜか、巨乳じゃないことを何年も悲観していた今までの自分とは別人になっていた。

あれほどおっぱいに固執していたのに、母になり1年ほど経った頃には、抱っこ紐の横から半日乳首が出ていても気がつかないくらい、もはやおっぱいは「指」と同じくらいの日常的なものになってしまっていた。巨乳とか巨乳じゃないとか、どっちでもよくなってしまったのである。とにかくそれまで気にしていたあらゆる細かいことが気にならなくなっていった。すると新しいものに目がいくようになり、視野が広がった気がした。アップデート後、カラダは元に戻るけど、精神はそのまま最新版を維持!

縮んだ胸のその奥、気付けば心に風船を抱え、深呼吸するたびに、目に見えないそれは大きく膨らみ、余裕が満ち、フワッと宙に浮けそうなくらい、心は軽い!広い!

本当のプリンセスが持つものは、ガラスの靴でも巨乳でもなく、この、心のエアリー感ですよ。

今なら飛べそう。司会になれそう。光の速さで走れそう。

この連載について

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メンヘラ・ハッピー・ホーム

スイスイ

“メンヘラ”とは、もともと「心の病を患った人」を指すネットスラングです。でも今ではすっかりカジュアルに偏在しつつある“メンヘラ”。その樹海から脱け出したスイスイさんが、我が身を振り返りながら、今さら聞けないメンヘラの基礎の基礎、そして...もっと読む

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コメント

fahrenheitize 今回もクソワロタww 約15時間前 replyretweetfavorite

o8o8o8o あーすごくわかる。 ≫ 1日前 replyretweetfavorite

sizukanarudon スイスイ@suisuiayaka https://t.co/DNR5rvaoXE 島田紳介× 島田紳助○ 夏の海とか冬の街とか 思い出だけが性感帯 YEAH… https://t.co/srD6mVWD2N 1日前 replyretweetfavorite

sac_ring 授乳中の期間限定巨乳で駆けるの、想像しただけでいたいよー。あの石乳、いや岩乳をわすれない 1日前 replyretweetfavorite