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【芸能・社会】

前田健さん 帰らぬ人に 24日「ロンハー」収録してた

2016年4月27日 紙面から

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 24日に東京・新宿の路上で倒れ、心肺停止状態で病院に搬送されたお笑いタレント前田健さんが26日午前1時36分、虚血性心不全のため死去した。44歳。東京都出身。歌手の松浦亜弥の物まねでブレークした前田さんは「まえけん」の愛称で親しまれ、声優や振付師としても活躍。同性愛者であることをカミングアウトしており、倒れた24日は“オネエタレント”が出演するテレビ朝日系スポーツバラエティーの収録に参加し、途中で体調不良を訴えていた。急死との因果関係は不明だが、前田さんには不整脈の自覚があったという。葬儀・告別式の日程は未定。

 所属事務所によると、前田さんは不整脈を抱えていたが定期的に健康診断を受けており、今年1月の検診でも異常はなかった。しかし、3月20日にはツイッターで「健康は大事、とわかっていながら健康のためにしていることは何一つない。まだ不摂生を嫌いになれない。不摂生への執着を捨てきれない。そんな44歳」とつづっていた。

 倒れた24日は、午前9時から午後3時まで、IKKO(54)らとともに栃木県内でテレビ朝日系「ロンドンハーツ」内の企画「おネエのスポーツテスト」の収録に参加した。

 同局によると、午前中に50メートル走と、走り高跳びを行ったが、昼休憩の際に前田さんが常駐している医師のもとを一人で訪れ、体調不良を訴えた。同局は「その際、医師との間で前田さんが不整脈の話をされたと聞いておりますが、具体的な詳細は把握しておりません」としている。

 局側はロケに先立って所属事務所を通じて番組内容を伝えたところ、前田さん自身が「大丈夫だ」と返事をしたという。前田さんはしばらく救護室で休んだ後、体調が回復したとして自らの意思で収録に復帰。午後は腕相撲とリレーを行い、午後4時すぎにロケが終了した。

 その後、前田さんは午後6時半ごろ、東京・新宿三丁目にある行きつけのパスタ店で一人で食事をし、注文したボリューム満点の料理をツイッターにアップ。7時前に店を出て、約50メートル先の新宿2丁目方面に通じる繁華街の路上で突然おう吐して倒れた。

 通り掛かった医大生が心臓マッサージをし、近くのパチンコ店店員がAED(自動体外式除細動器)で蘇生を試みたが心肺停止のまま救急搬送された。集中治療室に入り、心臓が動き出したが意識不明の状態が続き、未明になって息を引き取った。

 訃報を受け、テレビ朝日は収録内容の放送について「現段階では詳細を全部把握していないので未定となっております」としている。

◆突然のお別れに芸人仲間ら悲痛な声

 前田さんがブレークしたネタの“本家本元”の松浦亜弥はこの日、所属事務所を通じてコメントを発表。「昨日からのニュースを見て心配していました。突然の悲報にびっくりしています」と心境を吐露した。

 「私のことをおもしろ可愛(かわい)くモノマネしてくれて、楽しく話題にしてくれてうれしかったです。まえけんさんのモノマネで自分のクセを知ったりして」と、本人公認のネタであったことを明かした上で「初めて共演させていただいた時には、私の体調やスケジュールまで気遣ってくださったり、プレゼントと一緒に手書きのとっても丁寧なお手紙をいただいたことを覚えています」と振り返った。

 最後に「まえけんさん、『あやや』の思い出をありがとうございます。いまはただ心からご冥福をお祈りいたします」と感謝をにじませた。

◆「また見たかった」フルテンションあやや

 ▼お笑いコンビ「雨上がり決死隊」の宮迫博之(46) 「またフルテンションのあやや見たかった。そう言えば番組でキスした事あったよな。いつか俺もそっち行くからまたキスしようぜ そん時は嫌がれへんから。ゆっくり休んでや。心から御冥福申し上げます」

◆同じ事務所 はなわ「20年以上の親友」

 前田さんと同じ所属事務所のピン芸人・はなわ(39)は「はじめて会ったのは上京してすぐ。僕がまだ18歳。まえけんさんは23歳でした。20年以上もずっと一緒に芸人の道を歩んできた親友です。僕の『悩み』『喜び』『夢』すべてを一番に相談し共有してきた家族のような存在でした」とブログでつづった。

 出身地をネタにした歌「佐賀県」でCDデビューし、ブレークしたときに一番喜んでくれたのが前田さんだった。「僕の嫁ともすごく仲良くしてくれて、僕が家に帰れないほど忙しくなった時、いつも家に来てくれて僕の代わりに子守りや買い物を手伝ってくれました。相談もたくさんしました。嫁とケンカした時、仲裁してくれた事もありました」

 前田さんは「はなわにもしものことがあったら嫁と子供の面倒は俺がなんとかする」と言ってくれていたという。家族みんなから愛された兄貴分との突然の決別。はなわは「まえけんさん、早すぎるよ。悲しすぎます。心に穴があいてしまったような感じです。天国でゆっくり休んでください。そして、いつかまたバカやりましょう!」と呼び掛けた。

◆IZAM “女装の功労者”として感謝された

 かつて女性のような中性的なビジュアルで、ロックバンド「SHAZNA」のボーカルを務めたタレントのIZAM(40)は26日、公式ブログで前田さんから感謝されていたことを明かした。数年前にドラマで共演し、昨年に共通の知人の店で再会。その際、前田さんは「勝手にIZAMくんには感謝してるんだ。だって、オネエではないけれど男性が女性の格好をして世に出るなんてまず認めてもらえなかったでしょう? それが、IZAMくんがSHAZNAでやってのけた功績のお陰で昔よりオネエという存在を否定されなくなってきているし、各所で受け入れてもらいやすくもなったし、需要も増えた」と感謝されたという。

 また、好きな数字を聞かれて答えると「え〜、イザムなら(語呂合わせで読める)136番だと思ったぁ」と笑っていたことを振り返った。前田さんが亡くなった時刻は1時36分。「もう…マエケンさん…いい人すぎて、人間として魅力的で最後の最期まで本当にズルいですよ。絶対に忘れないですけど、もっと忘れられなくなったじゃないですか!」と悲痛な叫びを上げた。

◆ロンブー淳「元気そうにみえたのですが…」

 前田さんにとって最後のロケとなった「ロンドンハーツ」の企画コーナーを現場で見届けた「ロンドンブーツ1号2号」の田村淳(42)はツイッターで、当日の前田さんの様子を明かした。田村は「楽しそうで、元気そうに見えたのですが…この日もマエケンさんはすごく面白かったです。今までたくさんの笑いをありがとう」とつづった。

◆「不整脈ある人は走らない方がいい」

 前田健さんの死因となった虚血性心不全について、東京・世田谷区にある「世田谷井上病院」の井上毅一理事長は「心臓から血液を送り出すポンプの働きが悪くなり、体中の組織に栄養が行き渡らなくなる状態で、一番多いのは心筋梗塞や狭心症。不整脈からも発症する。珍しい病気ではなく、30代後半から40代の発症も多い」と話す。

 不整脈の持病があったという前田さんは倒れた当日朝、出演番組の収録で走ったりして気分の悪くなる場面もあったという。井上理事長は「(一般論として)不整脈がある人は走ったりするのはやめた方がいい。朝起きて激しい運動をするのも良くない」と指摘する。

 さらに前田さんは倒れる直前にパスタを食べていたが、同理事長は「パスタは油が多く、血中脂肪が上昇してしまう。お酒もダメ」という。食事の際もいつもと様子が異なる前田さんの姿が目撃されており、同理事長は「心臓の筋肉が痛む、オシッコが出なくなるなどの自覚症状があったのではないか」と推測した。

 <前田健(まえだ・けん)> 1971(昭和46)年6月14日生まれ、東京都出身。高校卒業後に渡米し、ニューヨークの「ブロードウェーダンスセンター」で3年10カ月、ダンスと歌を習った。94年に帰国後、ピン芸人として始動。人間観察ネタや英語を駆使したコメディー、ダンスなどで人気を集め、松浦亜弥の物まねで大ブレークした。05年に「まえけん♂トランス.pj」名義でシングル「恋のプチアゲ♂天国」をリリースし、CDデビュー。声優や俳優、振付師としても活躍した。

 

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