トップ > 中日スポーツ > スポーツ > 首都スポ > 記事

ここから本文

【首都スポ】

アルペンの早大・松本達希 世界へ行く!

2016年4月26日 紙面から

雪上練習をする松本達希=長野県上田市の菅平高原パインビークスキー場で(神代雅夫撮影)

写真

 群馬・嬬恋村出身、20歳のアルペンスキーヤーが世界を目指している。全日本スキー連盟の男子ジュニア強化指定選手、早大の松本達希(3年・札幌第一)。2006年以来の国内開催となった今年2月のワールドカップ(W杯)湯沢苗場大会で、大回転に出場した。将来、W杯で世界を転戦する国際的スキーヤーとなることを見据えている。(藤本敏和)

 群馬県嬬恋村からほど近い、長野県上田市の菅平高原パインビークスキー場。青い空と白いゲレンデに挟まれるように、松本が雪を蹴立てていた。大回転のコースを、豪快なスピード感をもって何度も滑り降りていく。

 「ゲレンデは自宅から30分ぐらい。小学生のころから毎週末通っていたホームゲレンデのような所です」

 そのホームのような菅平つばくろゲレンデは、平日はほとんど競技者ばかり。コースにはポールが林立し、中学生から社会人まで練習を繰り返している異色のスキー場だ。村にある嬬恋スキーリゾートとこの場所で自身を鍛え上げ、松本は20歳のいま、世界を狙っている。

 競技スキーを始めたのは小2のとき。かつてヤマハのスキー部門で働いていた父の達也さんは現在、家業のキャベツ農家を継ぐかたわら地元で中学生のコーチを務めているが、その影響というよりも「友達と一緒にやることが楽しくて」始めたという。

 当初から目覚ましい成績を出していたわけではない。全国大会初出場は中3で、全国中学校大会の回転で5位に入賞したが、高校への推薦入学、という話は一切なかったという。

 変化を見せていくのは、札幌第一高に進学してからだ。嬬恋村には高校が嬬恋高ひとつしかなく、他校を選べば県内でも下宿生活。ならばスキーの強い北海道に行きたい、というのが進学の動機だった。そこで現役時代W杯出場経験がある元ヤマハの押切敬司監督と出会い、才能が開花するとともに意識が世界に向いていく。

 高2の全国高校総体(インターハイ)回転5位、3年時には日本選手権で回転8位に入賞。またジュニアの強化選手や、国際大会(ファーイーストカップ)のメンバーにもコンスタントに選ばれるようになり、国際経験も積んでいった。そして早大に進んだ昨年2月、1年生ながら、全日本学生選手権(インカレ)で大回転2位に入った。

 さらに転機になったのは今年2月のW杯湯沢苗場大会。50位で決勝には進めなかったが、世界のトップ選手が集まる夢の舞台に強烈な刺激を受けた。

 「W杯はすっごく楽しかったです。すごい選手ばかりで、あの中で上位争いできたらどんなに楽しいだろうと。僕の知っているアルペンスキーは、国内でも海外でも観客がほとんどおらず、ゴールしても何のリアクションもないんですが、W杯は全然知らない人が来て、応援してくれて。鳥肌が立ちます。実際に出て、絶対この世界に行きたいと思うようになりました。20歳でこの経験ができて本当に良かったと思います」

 現在、日本人でW杯の常連となっているのは湯浅直樹(33)=スポーツアルペンクラブ=のみ。その域にたどり着くには国際スキー連盟(FIS)のランキングを上げていくことが唯一の道だ。そのためにはFIS公認大会でポイントを稼いでいくこと。ポイントがたまれば、大きな大会の出場権が得られる。

 一方でインカレや国体はFISの認定がなく、勝ってもポイントは入らない。世界を目指すためには回り道にも見えるが、松本はそこでも結果を出したいという。

 「インターハイやインカレ、国体で『優勝』という分かりやすい結果を出せていないんです。高3のインターハイは回転も大回転も転んでしまって。タイトルレースでしっかり勝てる選手になりたい。それが国際大会にもつながっていくと思います」

 早大2年で出場した今シーズンもインカレ、国体ともに大回転2位と紙一重の結果が続いている。いずれも敗れた相手は上級生や社会人だが、世界を目指すためには乗り越えなければならない。

 確かな成長をしていることは間違いない。インカレ後に行われたFIS公認大会「えんがるカップ」1戦目の大回転で、インカレ覇者の新賢範(東洋大4年)を抑えて優勝している。

 「誰にも負けないと思うのは運動神経。トップ選手の滑りを見てイメージして、それと同じような動きを表現するのが得意です」という松本は、上位の大会に出て、上位選手の滑りを身近にすればするほど伸びるタイプ。世界の入り口に立った20歳は、湯浅に続くW杯常連を目指し、これからも飛躍を続けていく。

 <松本達希(まつもと・たつき)> 1996(平成8)年1月12日生まれの20歳。群馬県嬬恋村出身。173センチ、70キロ。嬬恋西中(現嬬恋中)から札幌第一高を経て早大。今季はジュニア世界選手権で回転23位、大回転24位。ジュニア日本選手権大回転3位。板はサロモン、ウエアはオンヨネ、ストックとヘルメットはウベックスの提供を受ける。小学生の時はサッカー、野球もしていた。家族は両親、姉、妹。

  ◇

 首都圏のアスリートを全力で応援する「首都スポ」面がトーチュウに誕生。連日、最終面で展開中

 

この記事を印刷する

PR情報

閉じる
中日スポーツ 東京中日スポーツ 中日スポーツ 東京中日スポーツ 中日スポーツ購読案内 東京中日スポーツ購読案内 中日スポーツ購読案内 東京中日スポーツ購読案内 中日新聞フォトサービス 東京中日スポーツ