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「ドラクエ」の堀井雄二、開発ストップした“幻の作品”激白!

週刊ジョージア 2016年4月26日 7時00分 配信

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日本のRPGの先駆け「ドラゴンクエスト」の生みの親・堀井雄二。今なお全シリーズの監修を務め、新作を出せば必ず大ヒットに導く名ゲームクリエイターだが、のしかかるプレッシャーは尋常ではないという。ドラクエ30周年を迎え、その苦労と工夫の裏歴史を前後編に分けてお届け!後編では延期を繰り返した「VII」の苦い体験に迫る。

「DQVII」発売延期の裏事情!?

──堀井さんのゲームでは、システム上の工夫が随所になされていますね。



工夫といえば、「I」のときは少ないデータ容量の中でやりくりするため、色々な方法を使いました。

当時のファミコンカセットの容量は64KBしかなくて、これって今の写メ1枚分より少ないんですよ。

スマホの写真だと1枚1.2MBくらいはあるので、写真1枚の約20分の1の容量の中に、マップからシナリオから音楽、プログラムまですべてを詰め込みました。

だから、カタカナの文字データを全部入れることすらできなくて、20文字分しか入ってないんです。



──今のゲームではカタカナどころか、漢字も当たり前に使われていますね。



当時は限られた文字の中で、モンスターの名前や地名を考えて(笑)。でもそうした制限は意外と楽しかったんですよ。

ぼくが初めてファミコンで手がけたのは「ポートピア連続殺人事件」なんですが、最終的に2KB足らなかったんです。

2KBはだいたい2000文字くらい。そこで、全部で1000本くらいあるセリフから、それぞれ2文字ずつ削ればいいんだと思って。

一番削ったのは、「ぱる」っていうお店の場所を教えてくれる人のセリフ。

元は「あそこのかどをまがっていったところを~」という詳しい説明が入ってたんですが、もういいやと思って「へえ ぱる なら そこでっせ」だけにしたんです(笑)。



──「そこでっせ」ですか(笑)。



そのほかにも助詞を省いたり、語尾を変えたり…その積み重ねでようやく1本のカセットに入れられたんです。



──その苦労を考えると、現在の大容量ゲームの開発環境は非常に楽かもしれませんね。



それが、容量が増えすぎるのも問題なんです。

実際「IV」の次につらかったのは、CDメディアになって初の「VII」で。「I」の1万倍くらい容量があったんですよ。

欲張りすぎて、システムとかシナリオとか詰め込みまくったら、開発資料は8センチのクリアファイルが20冊以上にもなっちゃって。

あのときは「終わんないんじゃないかな」と思いました。発売日を告知しておきながら延期もしましたしね。



── “出る出る詐欺”ともいわれ、プレイステーションのCMでは「今年こそドラクエが出ますように!」とネタになっていました(笑)。



今になって考えると、プレイ時間も長すぎたかなと思ってます。100時間以上かかるんですよ。ちょっと大変すぎるだろって。

新しいハードで気負いすぎましたね。



──長ければ長いほど楽しめるとは限らないと。



特に今の時代って、RPGというもの自体“重い”感じがするんですよね。

例えばスマホのゲームなんて、本当に1分か2分で遊べるでしょう?それに比べるとRPGは始める段階で敷居が高い。

その点ドラクエは歴史があるので、ドラクエというだけで手に取って遊んでくれる人がいる点で非常にありがたいんですが…。

だからこそ、その期待を裏切らないように、すんなり入り込める世界観だったり、プレイヤーが迷わないシステムだったり。よく考えて開発しています。

“才能”よりも“地道な作業”が傑作を生む

──ドラゴンクエストは発売30周年を迎える大ヒットシリーズへと成長されたわけですが、堀井さんのキャリアの中で失敗した作品というのはないのでしょうか?



世の中に出すことができなかった作品がありますね。

まだインターネットがあまり普及していない頃に、インターネットに繋がなくても一人で疑似的に掲示板やチャットを楽しめるようなゲームを作っていたんですよ。

スタッフも使って開発していたんですけど…作るのが遅くて、先にネットが普及しちゃって開発はストップ(笑)。



──その分の苦労が水の泡に…。



でもそのアイデアの一部は、ニンテンドーDSで発売した「IX」に生かせました。

DSはスイッチを入れただけで、近くにあるゲーム機同士がネットワークで繋がるんです。だからネットに繋げることの敷居が低いんですね。

それで「宝の地図」を、通信機能を使用してユーザー間で共有できるシステムや、近くにいる人たちとマルチプレイできるシステムを加えたんですよ。

プレイヤーたちには喜んでもらえたようで、没企画も無駄ではなかったと思います。



──きっと、他にも面白いアイデアを温めているんでしょうね。



そうですね。ただ、ゲーム開発ではアイデアも大切ですけど、それを“カタチにする忍耐力”はもっと大切です。

実際にゲームを作り上げるのは、コツコツした地道な作業の繰り返し。手を動かさないとダメなんです。

だから普段の生活も地味ですよ。「III」発売当時も「ヒットしたからハデな生活をしてるんじゃないか」といわれてましたけど、仕事場に引きこもりっきり。

ずっと次回作の作業をしていて、たまにメシでも食おうかって出かけるのも、近所の立ち食いそば屋さんでした(笑)。



──“才能”だけでやっていけるほど、甘くないということですね。



今は年齢的に余裕をもたせてますけど、それでもけっこう忙しいんですよ。いろんなプロジェクトがめじろ押しで、今日も夜中まで打ち合わせです。

誰しも頭の中にあるうちは傑作なんだけど、やっぱりそれを世に出すためには相応の労力が必要で、その苦労を惜しんではいけないんです。

他の作品を見て「自分なら、もっといいものを作れる」と思うかもしれないけど、思ってるだけじゃダメ。出さなきゃならない。

やってみて失敗することもあるけど、それでも“出すこと”が大切なんです。



──頭の中にあるだけでは、失敗にすらなっていない?



そうですね。恐れずに、むしろ“失敗しにいくつもり”でやった方がいいと思う。

人生における失敗は、ロールプレイングゲームみたいなものですから楽しめばいいんですよ。

【週刊ジョージア】

堀井雄二●(ほりい・ゆうじ)54年生まれ、兵庫県洲本市出身、早稲田大学第一文学部卒。ゲームデザイナー。フリーライター時代、パソコンゲーム開発に傾倒。「ポートピア連続殺人事件」「オホーツクに消ゆ」などの開発を経て、86年「ドラゴンクエスト」を発表。その他の代表作に「いただきストリート」「クロノ・トリガー」など。

取材/熊山准 構成/questroom inc. 撮影/小田原リエ

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