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堤防決壊 避難のあり方再検討を

 記録的な大雨に見舞われた茨城県常総市の鬼怒川や宮城県の渋井川で堤防が決壊し、住宅地が広範囲で浸水した。特に、鬼怒川の決壊では多数の人が行方不明になっている。

     ヘリコプターで必死に住民を救出する映像を息をのんで見つめた人が少なくないだろう。住宅などに取り残された人がまだいる。

     行政や関係機関は、住民の救出と不明者の捜索、避難者の生活支援にまず全力を挙げてもらいたい。

     国が管理する1級河川である鬼怒川の堤防決壊は深刻だ。防災では避難などソフト面の対策と併せ、ハード面の整備が欠かせない。

     決壊した堤防は、「10年に1度の洪水」に対応するためかさ上げ工事が予定され、用地買収に乗り出した直後だった。整備に優先度があるのは仕方ないとしても、日常の管理や安全点検に死角はなかっただろうか。しっかり検証すべきだ。

     気象庁は一昨年、特別警報の運用を始めた。数十年に1度の規模の豪雨の際などに出される。茨城県には10日午前7時45分に大雨特別警報が出された。県は市町村、市町村は住民に知らせる義務が法律で定められている。常総市の一部地区では、避難指示が特別警報の数時間後にずれ込んだ。どこまで住民に危機感が伝わっていたのだろうか。

     住民へ聞き取りをして、情報伝達の方法や、避難を呼びかけるタイミングにどんな問題があったのか検証してほしい。今後の教訓として生かさねばならない。

     巨大な積乱雲群が連なる「線状降水帯」が長時間停滞することで、想定外の大雨をもたらした。大規模土砂災害で多くの被害者を出した昨年の広島市の大雨と同じケースだ。

     正確に「線状降水帯」の時間や場所を予測するのは難しいという。地球温暖化でこうした雨の降り方は今後増えると専門家は指摘する。

     最悪を想定し、先手を打った防災対応を進めることが肝心だ。

     米国では、ハリケーンに備えて「上陸○時間前に避難勧告、○時間前に公共交通を運休」と決めている州がある。「タイムライン(事前防災行動計画)」と呼ばれるものだ。日本でも国土交通省の呼びかけで、こうした取り組みを始めた自治体がある。

     たとえば特別警報が出た場合の対応を「タイムライン」で決めておけば、避難指示が「空振り」に終わることをためらう必要がなくなる。多くの自治体で検討してもらいたい。

     災害から身を守るのは、最後は自分自身だ。災害による被害範囲を地図化したハザードマップで住んでいる地域の危険度を知り、日ごろの訓練や準備を重ね、いざというとき早めの避難を心がけてほしい。

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