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派遣法改正 雇用安定に全力尽くせ

 改正労働者派遣法が成立した。企業は一定の手続きを取れば派遣労働者を期間の制限なしで使えるようになる。派遣会社には「雇用安定措置」を義務付けたが、企業の努力に任せるだけでは実効性は上がらないだろう。厚生労働省は派遣労働者の正社員化や雇用条件の改善に向けてガイドラインを整備し、企業に対する指導や監視に万全を期すべきだ。

     政府が成立を急いだのは、違法な派遣と知りながら労働者を受け入れている企業がその労働者に労働契約の申し込みをしたとみなす現行法の規定が10月から発効するためだ。直接雇用を迫られる企業の窮状に配慮し、今回の改正法でこの規定は事実上骨抜きにされた。

     改正法はすべての派遣会社を許可制にし、キャリア支援制度があることを許可要件に加え、計画的な教育訓練と報告を義務付けた。また、派遣会社には同じ職場での勤務が3年に達した労働者の雇用を受け入れ先の企業に要請するか、派遣会社自らが無期雇用するなどの雇用安定措置を義務付けた。

     ただ、受け入れ企業にとっては3年ごとに派遣社員を入れ替え、労働組合の意見を聞く手続きを取れば派遣労働者を使い続けることができるようになる。これまで期限の制限がなかった専門26業務も原則3年が上限となるため、改正法施行に伴って雇い止めにされる人が続出する恐れが指摘されている。

     雇用安定措置が名目だけに終われば、低賃金で不安定な派遣労働者の状況を固定し、企業はコストの低い派遣労働者を今以上に求めるようになるだろう。これでは雇用の不安定化を増幅するだけだ。

     今回の法改正には日本の雇用制度の根幹を変える面があることも指摘したい。労働者派遣法は1985年、職業安定法で禁止されていた「労働者供給」を専門業務に限定して認める制度として始まった。99年の改正で一般業務に対象を広げたが、期間は1年(後に3年)に限定した。業務や期間の限定は派遣先企業の正社員を保護する観点からである。

     どんな業務も派遣労働者を使い続けることができれば、企業はコストの高い正社員の採用を手控えるだろう。今回の法改正は正社員中心の雇用制度にも影響することが避けられず、安倍政権が進めようとしている残業代ゼロの成果主義賃金や解雇の金銭解決などと同一線上にある。労働規制を緩和し企業の競争力向上を優先する路線だ。

     働く人の生活が犠牲にならないよう、政府は厳格な雇用安定措置を行い、労組も監視機能を十分に発揮すべきだ。派遣労働者だけでなく正社員も含めた雇用全体の問題なのだ。

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