さて今日は金融について考えてみたいと思います。
といいますのも、なんかFX(外国為替証拠金取引)で簡単に儲けることができますみたいなのがちょいちょい目に入ってきたから。
ご丁寧にこんなに儲かりましたってスクリーンショットまで載せてらっしゃいました。
しかも口座開設のアフィリエイト誘導までしてあります。
おっさん的な感覚では理解できないんですが、最近は主婦層や学生さんでも簡単に口座開設して儲けることができますよ、なんてのが謳われているんですね。
私は新卒時代から株式投資は現物も信用もやっていますし、商品先物取引にも手を出したことがあります。
最近は投資といえる取引が出来ているとは思うのですが、以前は投機とかギャンブルとか言われてもおかしくない取引をずっと続けてまして…。
まあ10年以上細々と続けていて、その間はそれなりに痛い目にもおいしい目にも遭ってきました。
ただFXはやったことないんですよね。
率直に思ったことを言葉にしますと「こんなんで勝てるほどFXって甘いの?マジでリスクとか考えてんのこれ?というか株とかすっとばしてFX…?外貨預金じゃダメなん…?」て感じでした。
証拠金取引って結構リスキーな取引のはずなんだけどなあと。
別に私は聖人君子じゃありませんので、赤の他人が儲け話に飛びついて人生詰んでしまったとしてもどうでもいいのですが、良い事しか書いてないのがどうにも納得がいきません。
まあ儲かるやり方はそこらじゅうに溢れてると思うので、投資・投機のさわりの仕組みやリスク、損の仕方を大雑把に語ってみようと思います。
家も畑も奪られちまっただ
ここで説明する話の本筋とは関係はありませんが、私が若いころなんかはよくこんな風なことを耳にしたものです。
曰く、「どこそこの誰々さんは株で全財産無くしちまった」「あそこの家は先物取引で大損こいて夜逃げした」など。
当時は、こういった話は実際に起こり得る出来事だったのです。
ではなぜこういったことが起こり得るのか。
単純に言いますと「お金を借りて」いたからです。
自分が持っているお金の範囲内であれば、全財産がなくなることなどありません。
その「お金を借りる」という行為については、ギャンブル依存症になり自ら進んでお金を借りたケース、証券会社や先物取引会社の罠にはめられたケース、が考えられます。
ギャンブル依存についてはまあ自己責任ですが、はめられたケースについては闇が深いです。
当時の証券会社や先物取引会社は業界的にコンプライアンス意識の欠如が見られ、顧客の理解を超えた取引内容を強引に勧めたり、顧客から預かった資金を承諾なく勝手に運用して手数料を稼いだり、顧客の資金の返還を拒否したりと、犯罪行為に該当するようなことをするケースも散見されました。
知らないうちに多額の損失を抱えているということが起こり得たのです。
いずれにしても資産の売却などで手当てせざるを得ず、家や田畑を手放したりということになったのです。
「お金を借りて」まで利益を得ようとすることは、損をした時には「借りたお金は返さなきゃいけない」ということをご理解いただいてご覧いただければと思います。
投資と投機の違いについて
ざっくりと。
「投資」というのは、例えばある企業の将来性を見据えてお金を出してその会社の株式を買い、その企業の成長に伴って出る利益から配当金という利益還元を受けたり、株主優待を受けたり、最終的には値上がりによる売買益を得たりすることを目標にします。
企業側も安定株主が増えることで経営の安定性が増しますし、株主も利益を得ることができる、相互的に利益を産み出す理想的な関係を目指すのです。
「投機」とは、投資対象ではなく値動きを見ます。
今後上がるのか下がるのか、どうすれば売買益を得ることができるのかが重要になるわけです。
個人的には短期的に売買をすることで利益を得ようとする行為はこの「投機」とみなすことができるのではないかと考えています。
金融におけるレバレッジについて
投資や投機において、「レバレッジ」という言葉を見かけることがあります。
もともとは「テコの作用」を意味してまして、力点の1を変えずに、支点をずらすことで、作用点にある3とか4とかの1より重いものを持ち上げる、というやつです。
転じまして1の自己資金で、より多くの資金を動かすことを指します。
例えば欲しい株式があるけど50万円出さないと買えない。
手元には20万円しかない場合、このレバレッジ効果を使えば買うことが出来ます。(後述する信用取引)
この場合、30万円は他人資金、つまり借金して株式を購入しているわけです。
カッコイイ単語でごまかしていますが、結局「お金を借りて」買っているわけですね。
これがキーポイントになりますので覚えておいてくださいね。
では 次に具体的な取引の内容についてお話ししてみたいと思います。
前提条件として投資資金は100万円、手数料などの付帯費用は省きます。
株式について
株式投資というのは比較的メジャーな投資手法かと思います。
ある企業の発行している株式を購入し保有することで、将来の値上がり益や配当金を狙うことです。
例えばみなさんご存知のT自動車の場合ですと、
6,000円(1株当たりの価格)×100株(取引の最小単位株数)=600,000円
T自動車の株式が100株と、現金が約40万円となります。
さて、この取引が成立してから将来にいたるまで、最大でいくら損する可能性があるでしょうか?
はい、仮に倒産したとするとその会社の価値は0になりますので、最大で約60万円、つまりT自動車の株式に投資した金額の全額を損することになりますね。
「うわー途中で売っとけば良かったー」と涙するも後の祭りです。
投資した企業を間違えてしまった、または売れる時に売っておけば良かった、とあきらめましょう。
詐欺取引
「お客さん、実は未公開の企業で良い株があるんですけど買いません?」
はい、未公開株詐欺ですね。
一般人が売買することのできる株式というのは、東京証券取引所などの正規の取引所に上場、JASDAQに登録、証券会社の店頭で公開されている企業に限られます。
新聞などに載ってます。
例えば竹中工務店やYKKなど、超有名でも上場していない企業というのは意外とありますので、それら企業の株式をこっそり買いませんかとそそのかしてくる輩がいるのです。
100%詐欺ですので買わないように。
買ってしまった場合は損失が100%確定し、なおかつ出した金額の全額です。
手持ちのお金、もしくは株式などを担保にするレバレッジ取引です。
大まかに言って最大約3倍のレバレッジ効果を得ることが出来ます。
つまり100万円相当の担保があれば300万円ぐらいまで株式を売買することができます。
「売買」と書きましたが、通常現金取引では「買ったものを売る」ことしか出来ませんが、信用取引では「売ったものを買い戻す」という取引が出来ます。
単に順番を逆にしただけなんですがこれは後程。
先述と同様、T自動車の「買い」の場合、
6,000円(1株当たりの価格)×500株(取引の最小単位株数)=3,000,000円となり、T自動車500株の信用買いと100万円の現金となります。
100万円を担保にして300万円相当のT自動車の株式を買っていることとなり、ということは200万円を借金しているのと同じです。
では、この取引が成立してから将来にいたるまで、最大でいくら損する可能性があるでしょうか?
仮に倒産したとするとその会社の価値は0になりますので、最大で300万円、つまり投資した時に持っていた100万円では足りないということになりますね。
この不足分200万円については当然追加で支払わなくてはなりません。
さて、信用取引で「売り」から入った場合はどうか。
ちなみに「売り」から入るということはその企業の株価が下がったら「買い戻す」ことによって差益を出す取引です。
売ると言ってもT自動車株を持っているわけではないので、どこかから売るための「株を借りて」こなければなりません。
100万円しか持っていないのに300万円分のT自動車の株式を売ります。
この時点でT自動車の株式をどこかから「借りている」ことになります。
借りたものは返さなければならないので、最終的には買って返します。
仮りに倒産して1円で「買い戻す」ことが出来れば約300万円の儲け。
では、この売りの取引が成立してから将来にいたるまで、最大でいくら損する可能性があるでしょうか?
株価が上がってから「買い戻す」ことで損失が出るわけですが、答えは無限大です。
実際に永遠に上がり続ける株式ということは有り得ませんが、T自動車が日本国を買収する、などのとんでもないニュースが出た場合、どこまで上がるかわからないよねって話です。
仮に株価が10,000円まで上がった時に「買い戻し」たとすれば、500株分の損失は200万円ということになりますので、最終的には投資資金に100万円を上乗せして支払わなければならないことになります。
損失が限定できない、というイメージです。
商品先物取引について
ざっくりいうと、将来「ある時点」までに「ある商品」がどれぐらいの値段になるかを、現時点で予想していく取引です。
「ある時点」というのは、商品先物取引には「何年の何月」までにという最終の決済期限があります。
例えば「金」の「2017年2月限」物であれば、2017年の2月を限度として、「買い」は「売る」か「全額を支払って現物を引き取る」、「売り」は「買い戻し」をしなければならないのです。
(買いの場合、株式の信用取引と同様、実際に商品を受け取ることが出来ます。例えば「金」なら1単位=1キログラムのインゴット、「ガソリン」なら2単位=100キロリットルなどです。金ならまだしもガソリンは個人じゃ無理ですね。)
「ある商品」というのは商品先物取引における扱い商品で、「金」などの鉱物から、「とうもろこし」などの穀物類、「ガソリン」などの石油製品にいたるまで多岐にわたります。
そして、取引をするには「証拠金」とよばれる「見せ金」が必要となります。
まあ実際は担保ですね。
さてそれでは「金」を例にとって考えてみましょう。
【2016年4月22日終値ベース/2017年2月限/PSR96,000円】
4,398円(1グラム当たりの価格)×1,000グラム(取引の最小単位グラム数)×10枚=43,980,000円
この金額の取引をするのに必要な証拠金は96,000円で、それが10枚分なので960,000円です。
つまり、100万円持っていれば4,000万円を超える「金」を買えて(もしくは売れて)しまうわけです。
この場合、レバレッジは40倍を超えています。
では、「金買い」の取引が成立してから将来にいたるまで、最大でいくら損する可能性があるでしょうか?
「金」は倒産したり価値が0になることがないので、損失の最大金額は特定できません。
商品先物のなかでは比較的安定した価格推移をする「金」ですが、それでも直近1年の高値・安値で750円を超える値動きをしていますので最も高い時に買って最も安い時に売ってしまった場合、1年で750万円は損する可能性があったということですね。
FX(外国為替証拠金取引)について
こちらは為替の値動きを予想する取引です。
例えばドルと円を取引するのであれば、「円を売ってドルを買う」、「円を買ってドルを売る」の選択肢があります。
では、「円を売ってドルを買う」場合を見てみましょう。
必要な証拠金については概ね売買代金の4%なので44,400円になります。
この場合、レバレッジは25倍となります。
【2016年4月26日参考値】
111円(1ドルの円価格)×1,0000(取引単位)×22枚=24,420,000円
100万円の証拠金で最大約2,400万円(22万ドル)の取引が出来ます。
「ドル」もアメリカがデフォルトを起こしたり、国家が解体したりしない限りは価値が0になることがないので、損失の最大金額は特定できません。
こちらは直近1年の高値・安値で15円を超える値動きをしていますのでそこを参考にするなら、一年で330万円を損する可能性があったということですね。
その他の証拠金取引について
日経平均株価指数などの指数を取引する指数先物取引など、またはそれら指数や為替、商品から派生する権利を売買するオプション取引などがありますが詳しい内容は割愛します。
セーフティネット
とまあ取引後の損失の話をしてきましたが、これらはひどい極論です。
ただ、取引内容と損失のイメージを掴むためには間違っていないとも思っています。
実際には、このような最悪の事態にならないように、各業界や法律、または事業者によってセーフティネットがあります。
ここで覚えておいていただきたいのは、投資や投機における「損」というのは、反対売買(買ったものを売る・売ったものを買い戻す)を行った時に初めて確定するということです。
逆に言えば反対売買をしなければ「損」をすることはありません。
あくまでも「含み損」「みなし損」です。
「含み損」は別に損失金額を支払う必要がありませんが、保証金・証拠金からはその分を差し引かれて計算されます。
例えば前章のT自動車株式を信用取引で買った場合で計算してみましょう。
T自動車株式が買ってから200円値下がりした場合、500株所有していますので「含み損」は10万円ですね。
その時点での保証金は投資資金100万円ですので、そこから10万円差し引きます。
とすると実質保証金は90万円になりますね。
では保証金の率はと言いますと、最初は100万円を取引した金額300万円で割った33.3%でしたが、「含み損」となると90万円割る300万円で30%になるのです。
ほとんどの証券会社では、この保証金率を20%以上に維持しなければならないと定めており、「含み損」の増加で20%未満になった場合には、20%以上に回復させるだけの追加のお金「追証」を差し入れなければなりません。
T自動車を例にとりますと、株価が5,000円まで下落したとすると「含み損」は1,000円×500株ですので50万円となり、差し引き後の保証金は50万円になります。
保証金率は16.7%となりますので、20%以上にするには10万円以上を追加差し入れしなければなりません。
これが規定通りに入金されない場合には、強制的に売られてしまい、約50万円の損失が確定します。
FX会社にもよるようですが、FXの証拠金もこれに準じた形で20~30%を強制決済ラインにしているケースが多いようです。
商品先物取引の場合も先物取引業者による部分もあるようですが、証拠金は常に100%以上を維持しなければならない為、本当にぎりぎりで取引をしている場合、少々相場が下がったら、翌日正午までに不足分を入れなければ強制的に売買されて、損失が確定してしまいます。
非情なようですが、投資家の資産の保全を図る上で必要なセーフティネットと言えるでしょう。
実際には金融機関から借りてでも追証を差し入れ、さらに深みにはまっていく投資家も珍しくはありませんが、そういった場合、幸せになれるケースは少ないでしょう。
本題
別に私は投資や投機を否定するわけではありません。
自分も若いうちからやってますしね。
しかし儲かるどころか損するかもしれないものを、「ちょっとちょっとこんなに簡単に儲かるんですよ、やってみたほうがいいですよ」みたいなノリで紹介する人の気が知れないってだけです。
しかも儲けるためにやってるのがテクニカル分析、しかもチャートだけって…。
実際何も知らない人が口座開設して入金して、注文段階で入力間違って大損こく可能性だってあるんじゃないですかね?知らんけど。
あんまり無責任なことしちゃだめです。
悪意を持ってみれば儲かりましたってスクリーンショットだって、同じ値段で売りと買いを同時に出して、儲かったほうを反対売買した後に撮って、直後に損してるほうを反対売買すれば大した損もなしに作り出すこともできますし、もっと悪意を持ってみればフォトショップなんかで加工したんじゃないかと勘繰ることだってできます。
それでなくても損することなんて簡単です。
人間って「欲」がありますよね。
例えば何かの株式を買った時って、目標を定める人が大半だと思います。
その会社の内容や事業の進捗状況、今後の社会的な動きなどを考えて、2倍になると予想したとします。
では、その後実際に2倍になったとして売れると思いますか?
これが意外に売れないものなんです。
儲かっている時、特に急速に値上がりしている時なんかはもう脳に変な物質が流れ込んで「まだ上がる!もうちょい行く!」なんていう麻痺状態に陥るんですよね。
で、下がってから手放す。
だけならいいんですが、手放してから上がり始めるともう悲惨ですね。
次からはもう売れなくなります。
結局上がった時に売れなかった、含み損の株式だらけになる人が多いです。
逆に損が膨らんでいくと、徐々に冷静ではいられなくなります。
いくらまで下がったら手放そう、というロスカットを設定できる人ならまだいいですが、初心者に限らず、ちょっと慣れた人でも設定しなくなる人多いんですよね。
そんなときほど襲ってくるのが突発的な急落です。
「ああまた損が膨らんだ…。ああ保証金率がそろそろ…。」などと気力が根こそぎ削がれます。
そんな弱気になっていながら「また戻るかもしれない 」「そろそろ戻るかもしれない」などと、追証を差し入れるもんだから始末が悪い。
市場どころか人生まで退場してしまった人を何人見てきたことか…。
おわりに
なんやかや言いましたが、結局のところ投資・投機はすべて自己責任です。
儲かることもあれば損することもあります。
相場に絶対はないですが、勉強することで損失を小さく、利益を大きくすることだってできます。(と信じている)
個人が手に入れられる情報なんてのはたかが知れてますがね。
直接の競争相手は、銀行・証券会社・保険会社・商社・投資信託・石油王・ユダヤ資本などの巨大資本です。
直接的・間接的に自然災害や戦争、国家政策なども影響してきます。
その辺全部踏まえたうえで、自分で考えましょう。
まあ始めるなら財務諸表や企業IRなんかがある分、株式現物投資がとっつきやすいのかな。
ミニ株とかもあったような気がする。知らんけど。
証拠金取引は間違っても軽い気持ちで始めちゃダメ、ゼッタイ。