被災の東海大教授ら「ほっとけない」動植物世話
熊本地震で学生3人が亡くなり、校舎も損壊して休講している東海大農学部(熊本県南阿蘇村)で、自らも被災し避難生活を送る教授や技術職員らが、植物や家畜の世話を続けている。同大は通電火災の懸念があるため停電中で、水をくみ上げる機材を使えず断水状態。近くの学生用下宿の湧き水を分けてもらうなどして水を確保し、学生らが愛着を持って育てていた「命」をつないでいる。
農学部のある「阿蘇キャンパス」は約75万平方メートルの広大な敷地に校舎のほか、牧場や農場などがある。約1000人の学生たちは座学のほか、自分たちで野菜や果物を栽培したり、乳牛や馬の飼育をしたりして実践的に学んでいた。育てている植物の中には交配によって生まれた希少な系統や、品種登録を目指しているブルーベリー、キイチゴもある。
西隣の同県大津町で被災し、避難生活を送る小松春喜教授(64)=果樹園芸学=は「『こんな時なんだから、ほうっておけばいい』と言う人もいるが、私たちと学生が手塩に掛けて育ててきた果樹。枯らしてしまっては、同じものはできない」と、頻繁に手入れに来ている。
他にも、村内で自宅が全壊して避難したり、車中泊を続けたりしている教員もいるが、毎日5人前後が作業に訪れる。学内全体で必要な水は1日2トン以上。学生用下宿で分けてもらった湧き水をタンクに入れて運んだり、手押しの一輪車に雨水をためたりしてしのいでいる。
阿蘇キャンパスが再び利用できるようになるめどは立っておらず、県外などに一時帰省した生徒たちから「動物や植物の様子が気になる」「大学の片付けを手伝いたい」との声が大学に多く寄せられている。しかし、安全面を考慮して戻らないように呼び掛けており、教授らが世話をする状況はしばらく続きそうだ。
阿蘇市内の自宅が損壊し、一時は車中泊をしていた荒木朋洋農学部長(61)も毎日のように大学を訪れている。「亡くなった3人を含めた全学生が、一生懸命に育てた植物や動物たち。この土地で大学が再開できるか分からないが、学生が戻って来られるように世話を続けたい」【田中将隆】