Raphaが主催したフランドルライド
「東京のフランドル」でクラシックレースに思いを馳せた ロンド・ファン・裏尾根幹
4月3日(日)。100周年を迎えるロンド・ファン・フラーンデレンの開催を祝して、日本でもプチ「クラシック」なライドが行われた。Raphaが主催したフランドルライドの様子をレポート。
東京都西部、多摩地区のサイクリストにとってはもっとも馴染み深いトレーニングコースが通称「尾根幹」だ。起点となる調布市の多摩川原橋から町田市小山までをつなぐ約17kmの整備された幹線道路で、正式名称は「南多摩尾根幹線道路」。相模原方面へと向かうため、また多摩丘陵のアップダウンを活かした練習コースとして、都内のサイクリストが多く集まる人気コースである。
ただ、人気が高まる一方でサイクリストの密度が高くなりすぎ、すこし走りづらくなってきているのもまた事実。そんな最近の尾根幹事情もあり、じわじわと人気が高まりつつあるエリアが、「裏尾根幹」である。尾根幹の南側の丘陵地帯に張り巡らされた裏道をつなぐ、激坂とグラベルが次々に現れる裏尾根幹は東京にいながらにして、クラシックレースの雰囲気を味わえる貴重なエリアだ。
そんな東京のフランドルともいえるエリアで開催された「ロンド・ファン・裏尾根幹」。サイクルウエアブランド「Rapha」が100周年を迎える「ロンド・ファン・フラーンデレン」を記念してプロデュースしたライドイベントに編集部がお邪魔した。
当日朝。終日曇りという前日の天気予報は裏切られ、しとしとと小雨が空から落ちてくる。普段であれば走るのをやめて家でゴロゴロしているような空模様だが、クラシックの過酷さを少しでも味わうことで、選手たちへのリスペクトを深めることができると思えば、走らない理由は一つ減る。それに、どんなライドだって走り出せば楽しくなるもの。どんなご褒美が待っているか分からないが、走らないことには受け取る資格もない。
そう自分に言い聞かせ向かった集合場所には10名ほどのサイクリストが集まった。Raphaが主催するライドということもあり、参加者のみなさんは身につけているウエアもバイクもどこかハイセンス。顔合わせを済ませたら、いざ裏尾根幹へむけて走りだす。満開の桜並木が植えられた三沢川沿いを稲城中央公園方面へと進んでいくと、早速激坂が現れる。
とはいえ、距離は短く、一本登っても3分以上かかるような坂はほとんど無いので、ギアを落とせばなんてことはない。と思っていたら、みなさんが速いのなんの!むしろギアを軽くするどころか、少し掛けながらダンシングでグイグイ登っていくので、ついて行くのが精いっぱい。
なにせ、このライドを率いているRaphaジャパンの小俣さんはC1で活躍する脚力を持ったライダーなのだ。ほとんどの激坂区間をアウターで登っていく細いシルエットのどこからそんなパワーがでてくるの?と思わされるような力強い走りで先導を務めてくれた。
そんな小俣さんに負けず劣らずのペースを刻みながら激坂を駆け上がっていく参加者のみなさん。いくつもの登りと下り、そしてところどころに現れるグラベル区間をこなしながら走っていくのはかなり脚を消耗するものだ。プロ選手が足をつくコッペンベルグやパテルベルグはきっともっと凄まじいのだろうが、アマチュア、しかも体重増加傾向にある筆者にとっては裏尾根幹の坂だってそれはそれは厳しい「壁」である。
しかし、都心から1時間足らずの場所に、ここまで自然豊かな風景が残っていることには驚かされる。山を登り、森の中を通り、畑の中を行く。その合間には車が行きかう幹線道路も現れ、目まぐるしく変わる風景は、まさに日常と非日常がコインの裏表にあることを教えてくれる。尾根幹を走っているだけでは気付くことができない、刺激的なライドが楽しめるのが「裏」ならではの魅力だろう。
いくつもの激坂をこなして、良い具合に脚も削れてきたところで、後輪に違和感。どうやらパンクしてしまったようだ。なんとか登り切ったところでパンク修理をするが、グラベル用に履いてきた26cのタイヤに対してはいつも使っているミニポンプは頼りない。シュコシュコとポンピングするも全く空気が入っている気がしない。
その様子を見て、同行したRaphaの窪田さんが大きなフレームポンプで空気を入れてくれた。紳士である。あっという間に空気が充填されていく様子を見て、「太タイヤには大きなポンプだな」と認識を新たにした。実際、先日行われたRapha Prestage 上勝でもパンク修理の時間が完走できるかどうかに大きく影響していたという。そういった場からフィードバックを受けていることはRaphaのライドイベントならでは。
最後に1.5kmほどの長めのセクションを走り切れば、尾根幹の終点である町田街道との交差点に到着である。このころには、朝から降り続いた桜雨もすっかりと上がり路面も乾いてくる。ちょうど小腹も空いたところで、カフェで休憩をとることに。一定距離で糖分とカフェインを摂取しないと禁断症状がでてくるのは、サイクリストの持病のようなものだ。やれ、あそこのセクションはつらかっただの、そのホイールはどうなのといった自転車談義を始めてしまうのも同じ不治の病である。
ついつい根が生えてしまいそうになる腰を上げ、帰路につく。行きは「裏」なら帰りは「表」。走りなれた尾根幹をずんずんと走っていくと、あっという間にスタート地点についてしまった。かかった時間は行きの半分ほどだろうか。逆にいえばそれだけの距離をより濃密に味わえるのが「裏尾根幹」ということだ。
無事に帰ってきた一行は、最後に完走賞である「LOKSAK」の防水ケース(なんとRaphaのロゴ入りだ)とロンド・ファン・裏尾根幹シールを配ってもらって、フィニッシュ。約50km、午前中で終わる短めのライドであったが心地よい疲労感が満足感に変わっていくこの瞬間は、100km超のロングライドに勝るとも劣らない。朝の雨に諦めず走りだしたご褒美は、確かに受け取ることができたのだ。
そして、Raphaの直営店「Rapha Cycle Club TOKYO」にて行われたロンド・ファン・フラーンデレンのライブビューイングへ。朝は裏尾根幹でフランドルに思いを巡らせ、夜はプロ選手たちの雄姿を観戦する。100周年のスペシャルレースなのだから、見る側だって心を整えていたい。
いつもはサイクリストらしくコーヒーをいただくところだが、この日ばかりはベルギービール「Duvel」とクリームシチュー「ワーテルゾーイ」をチョイス。日本に居ながらにして本場の空気を味わえるこういった演出に、世界観を大切にするRaphaらしいこだわりを感じる。
放送が始まると吸い寄せられるように次々とお客さんが入ってくる。1年の中で最も人が集まるライブビューイングが今日なのだとRapha Japanの小俣氏と窪田氏は口を揃える。両氏の言葉通りカフェフロアが埋まるほどの人々がカンチェラーラのアタックに沸き立ち、サガンがモニュメントを制覇する瞬間を見届けた。
加えてこの日はロンド・ファン・フラーンデレンに出場経験のある三船雅彦氏の姿も。Rapha Japan代表の矢野大介氏が進行するトークショーでは、三船氏の貴重な体験談を聞くこともでき、フランドルの過酷さがよりリアルに想像できるように。自分の脚も目も耳も口も、全てがフランドルに染まる特別な週末。既に101回目が待ち遠しくなるほど、濃密な1日を用意してくれたRaphaに感謝だ。
text&photo:Naoki,YASUOKA
東京都西部、多摩地区のサイクリストにとってはもっとも馴染み深いトレーニングコースが通称「尾根幹」だ。起点となる調布市の多摩川原橋から町田市小山までをつなぐ約17kmの整備された幹線道路で、正式名称は「南多摩尾根幹線道路」。相模原方面へと向かうため、また多摩丘陵のアップダウンを活かした練習コースとして、都内のサイクリストが多く集まる人気コースである。
ただ、人気が高まる一方でサイクリストの密度が高くなりすぎ、すこし走りづらくなってきているのもまた事実。そんな最近の尾根幹事情もあり、じわじわと人気が高まりつつあるエリアが、「裏尾根幹」である。尾根幹の南側の丘陵地帯に張り巡らされた裏道をつなぐ、激坂とグラベルが次々に現れる裏尾根幹は東京にいながらにして、クラシックレースの雰囲気を味わえる貴重なエリアだ。
そんな東京のフランドルともいえるエリアで開催された「ロンド・ファン・裏尾根幹」。サイクルウエアブランド「Rapha」が100周年を迎える「ロンド・ファン・フラーンデレン」を記念してプロデュースしたライドイベントに編集部がお邪魔した。
当日朝。終日曇りという前日の天気予報は裏切られ、しとしとと小雨が空から落ちてくる。普段であれば走るのをやめて家でゴロゴロしているような空模様だが、クラシックの過酷さを少しでも味わうことで、選手たちへのリスペクトを深めることができると思えば、走らない理由は一つ減る。それに、どんなライドだって走り出せば楽しくなるもの。どんなご褒美が待っているか分からないが、走らないことには受け取る資格もない。
そう自分に言い聞かせ向かった集合場所には10名ほどのサイクリストが集まった。Raphaが主催するライドということもあり、参加者のみなさんは身につけているウエアもバイクもどこかハイセンス。顔合わせを済ませたら、いざ裏尾根幹へむけて走りだす。満開の桜並木が植えられた三沢川沿いを稲城中央公園方面へと進んでいくと、早速激坂が現れる。
とはいえ、距離は短く、一本登っても3分以上かかるような坂はほとんど無いので、ギアを落とせばなんてことはない。と思っていたら、みなさんが速いのなんの!むしろギアを軽くするどころか、少し掛けながらダンシングでグイグイ登っていくので、ついて行くのが精いっぱい。
なにせ、このライドを率いているRaphaジャパンの小俣さんはC1で活躍する脚力を持ったライダーなのだ。ほとんどの激坂区間をアウターで登っていく細いシルエットのどこからそんなパワーがでてくるの?と思わされるような力強い走りで先導を務めてくれた。
そんな小俣さんに負けず劣らずのペースを刻みながら激坂を駆け上がっていく参加者のみなさん。いくつもの登りと下り、そしてところどころに現れるグラベル区間をこなしながら走っていくのはかなり脚を消耗するものだ。プロ選手が足をつくコッペンベルグやパテルベルグはきっともっと凄まじいのだろうが、アマチュア、しかも体重増加傾向にある筆者にとっては裏尾根幹の坂だってそれはそれは厳しい「壁」である。
しかし、都心から1時間足らずの場所に、ここまで自然豊かな風景が残っていることには驚かされる。山を登り、森の中を通り、畑の中を行く。その合間には車が行きかう幹線道路も現れ、目まぐるしく変わる風景は、まさに日常と非日常がコインの裏表にあることを教えてくれる。尾根幹を走っているだけでは気付くことができない、刺激的なライドが楽しめるのが「裏」ならではの魅力だろう。
いくつもの激坂をこなして、良い具合に脚も削れてきたところで、後輪に違和感。どうやらパンクしてしまったようだ。なんとか登り切ったところでパンク修理をするが、グラベル用に履いてきた26cのタイヤに対してはいつも使っているミニポンプは頼りない。シュコシュコとポンピングするも全く空気が入っている気がしない。
その様子を見て、同行したRaphaの窪田さんが大きなフレームポンプで空気を入れてくれた。紳士である。あっという間に空気が充填されていく様子を見て、「太タイヤには大きなポンプだな」と認識を新たにした。実際、先日行われたRapha Prestage 上勝でもパンク修理の時間が完走できるかどうかに大きく影響していたという。そういった場からフィードバックを受けていることはRaphaのライドイベントならでは。
最後に1.5kmほどの長めのセクションを走り切れば、尾根幹の終点である町田街道との交差点に到着である。このころには、朝から降り続いた桜雨もすっかりと上がり路面も乾いてくる。ちょうど小腹も空いたところで、カフェで休憩をとることに。一定距離で糖分とカフェインを摂取しないと禁断症状がでてくるのは、サイクリストの持病のようなものだ。やれ、あそこのセクションはつらかっただの、そのホイールはどうなのといった自転車談義を始めてしまうのも同じ不治の病である。
ついつい根が生えてしまいそうになる腰を上げ、帰路につく。行きは「裏」なら帰りは「表」。走りなれた尾根幹をずんずんと走っていくと、あっという間にスタート地点についてしまった。かかった時間は行きの半分ほどだろうか。逆にいえばそれだけの距離をより濃密に味わえるのが「裏尾根幹」ということだ。
無事に帰ってきた一行は、最後に完走賞である「LOKSAK」の防水ケース(なんとRaphaのロゴ入りだ)とロンド・ファン・裏尾根幹シールを配ってもらって、フィニッシュ。約50km、午前中で終わる短めのライドであったが心地よい疲労感が満足感に変わっていくこの瞬間は、100km超のロングライドに勝るとも劣らない。朝の雨に諦めず走りだしたご褒美は、確かに受け取ることができたのだ。
そして、Raphaの直営店「Rapha Cycle Club TOKYO」にて行われたロンド・ファン・フラーンデレンのライブビューイングへ。朝は裏尾根幹でフランドルに思いを巡らせ、夜はプロ選手たちの雄姿を観戦する。100周年のスペシャルレースなのだから、見る側だって心を整えていたい。
いつもはサイクリストらしくコーヒーをいただくところだが、この日ばかりはベルギービール「Duvel」とクリームシチュー「ワーテルゾーイ」をチョイス。日本に居ながらにして本場の空気を味わえるこういった演出に、世界観を大切にするRaphaらしいこだわりを感じる。
放送が始まると吸い寄せられるように次々とお客さんが入ってくる。1年の中で最も人が集まるライブビューイングが今日なのだとRapha Japanの小俣氏と窪田氏は口を揃える。両氏の言葉通りカフェフロアが埋まるほどの人々がカンチェラーラのアタックに沸き立ち、サガンがモニュメントを制覇する瞬間を見届けた。
加えてこの日はロンド・ファン・フラーンデレンに出場経験のある三船雅彦氏の姿も。Rapha Japan代表の矢野大介氏が進行するトークショーでは、三船氏の貴重な体験談を聞くこともでき、フランドルの過酷さがよりリアルに想像できるように。自分の脚も目も耳も口も、全てがフランドルに染まる特別な週末。既に101回目が待ち遠しくなるほど、濃密な1日を用意してくれたRaphaに感謝だ。
text&photo:Naoki,YASUOKA
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