耐震 大揺れ1回のみで判断 国交省見直しも
最大震度7の大きな揺れが同一地点を2回襲う初のケースとなった熊本地震で、前震と本震には耐えたが、その後も続く大きな余震で建物が倒壊するケースが起きている。従来の耐震基準は1回の大きな揺れへの対応が前提で、想定外の事態。国土交通省は耐震基準の見直しを含め、検討する方針だ。
震度7を2回観測した熊本県益城町に近い熊本市東区の健軍商店街ピアクレス。16日未明の本震から約20分後、駅前アーケード街にごう音が響いた。「ガシャガシャとすごい音がして周囲が土煙に包まれた」。商店街で電器店を営む同区の井川正宏さん(52)は話す。約250メートル続く商店街のほぼ中央にあるチェーンスーパーの建物が、アーケードの支柱にもたれかかるように倒れ込んでいた。
同区内ではこの時、震度6弱の余震があり、とどめの一撃になったとみられる。井川さんも自宅壁にひびが入り、小学校の敷地で車中生活を続ける。気象庁は今後も最大震度6弱程度の揺れに警戒を呼びかけており、「スーパーが倒れる様子を見ただけに安心できないよ」と井川さん。
「今の耐震基準は『建物は損傷はしても命は守る』という考え方で、損傷後の状態は考慮されていない」と福和伸夫・名古屋大減災連携研究センター長(建築耐震工学)は説明。役所など防災拠点については、一度だけでなく繰り返す地震にも対応できるものにすることを検討しなければならないと説く。熊本大大学院の松田泰治教授(地震工学)は「本震より小さな揺れが最後の一押しとなって建物が壊れることはある。特に1981年以前の旧耐震基準で建てられた家屋は脆弱(ぜいじゃく)で、度重なる余震でダメージが蓄積している可能性がある」と指摘する。
国交省建築指導課によると、25日までに応急危険度判定をした被災建物は同県内10市町村で2万3857件。うち6割が危険、要注意の判定を受けた。同課は「専門家による調査結果などを踏まえた上で、今の耐震基準の妥当性について、見直しが必要かを含め検討したい」と話している。【飯田和樹】