豪の潜水艦建造 日本受注できず

豪の潜水艦建造 日本受注できず
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オーストラリアのターンブル首相は26日会見し、2030年代以降に導入する新しい潜水艦をフランスと共同で開発すると発表し、受注を目指していた日本は選ばれませんでした。
オーストラリアのターンブル首相は26日に南部アデレード郊外で会見し、2030年代以降に導入する新しい潜水艦12隻の建造について、日本・ドイツ・フランスの3か国から提出された建造計画を検討した結果、フランスを共同開発国に選定したと発表しました。
理由についてターンブル首相は「新しい潜水艦は世界で最も洗練されたものでなければならない。フランスからの提案はわれわれの求める要件に最も合う内容だった」と述べました。
日本は、新たな防衛装備移転三原則に基づき他国との共同開発で中核を担う初のケースとなることを目指して、政府と民間企業が合同チームを組んで、オーストラリア側への働きかけを強めてきましたが、選ばれませんでした。
選考の過程で日本は、長時間の潜航が可能な電池など世界最新鋭の技術を強調したほか、アメリカを含めた3か国の安全保障上の連携強化にもつながると訴えてきました。
これについてターンブル首相は「3か国の戦略的な友好関係はこれまでどおり強固なものだ」と述べ、日本を選定しなかったことが両国関係に影響を与えることはないとの考えを示しました。

外務省幹部「大変残念」

外務省幹部は「日本としては、オーストラリアとの防衛協力の観点からも最大限協力してきたので、大変残念だ。日本とオーストラリアは今後も『特別な戦略的パートナーシップ』のもと、アメリカも含めた安全保障分野での連携を深化させていくことに変わりはない」と述べました。 

共同開発国選定の経緯は

オーストラリアは現在6隻の潜水艦を運用していますが、就役当初から音がうるさいなどのトラブルが相次ぎ、新しい潜水艦は外国との共同開発が望ましいという声が出ていました。
おととし7月、当時のアボット首相は安倍総理大臣との間で防衛装備品の共同開発に関する協定に調印し、日本の潜水艦技術に高い関心を持っていたとみられていました。しかし、南部アデレードに集中する軍事関連企業の間からは、潜水艦技術の輸出経験がない日本との共同開発では、地元への技術移転が行われないなどとして日本との共同開発に対して否定的な声が上がりました。
このため、オーストラリア政府は日本のほかドイツとフランスから建造計画の提案を受けたうえで、共同開発国を選定することを決めました。ドイツやフランスは早くから「潜水艦はすべてオーストラリア国内で建造する」として、現地の関連企業と綿密に連携し雇用を増やすことなどを強調したほか、オーストラリアの政界や軍につながりのある人物を現地法人の役員に加えて働きかけを強めました。
これに対して、日本は4000トン級の通常型潜水艦を世界で唯一建造できることなど高い技術力をアピールしました。また、ことし2月以降、三菱重工業の宮永俊一社長と大宮英明会長が相次いで現地を訪れ、デザイン作成の段階から地元企業と取り組むなど日本としても現地生産の用意があると説明してきました。

日本が選ばれなかった背景は

日本が選ばれなかった背景には、安全保障面での連携強化という日本がアピールしていた点の優先順位が低かったことがあるとの見方が出ています。
今回の選定について日本側では当初、長時間の潜航が可能なリチウムイオン電池など世界最高水準の技術力を誇ることや、アメリカから「安全保障面での連携から日本との共同開発が望ましい」とする意見があがっていたことから、楽観的な見方が出ていました。しかし、オーストラリアの関連企業からは日本が潜水艦技術を輸出した経験がないことに加え、フランスのメーカーとの間では過去に取り引きの実績があったものの日本との間にはないことが課題だと指摘されてきました。
また、専門家の間では日本とオーストラリア、それにアメリカを加えた3か国の間の安全保障面での連携強化につながるという点は優先順位が低かったとの見方が出ています。
さらに、3か国の連携強化が最大の貿易相手国、中国を刺激することになると懸念する声もあり、こうした点から日本は選ばれなかったと受け止められています。