作家で元外務官僚の佐藤 優氏には、唸らされることが多いです。
曰く、作家として生計を立てていくようになってからは、一度も家で酒を口にしたことがない。
何故なら勉強の時間が惜しいから。
パーティで気が利くホストにウオッカを薦められても「ウオッカならロシアで一生分飲んできましたから」と水かソーダしか貰わない。
何故なら家に帰って勉強したいから。
さすが「知のプロ」は違いますね。
飲めない体質ではないし、ウオッカで酔いつぶれてしまうようでは、ロシアで諜報活動など出来なかったと書いておられましたが、
飲めるのに勉強のほうが優先なんだ!
と、私ごときはひっくり返る訳です。
これが覚悟の違いというやつですね。
すごいぞ優。
もういっちょ、いきましょうか。
佐藤優氏は同志社大学神学部から大学院神学研究科まで進まれていますが、
同志社大学神学部 私はいかに学び、考え、議論したか (光文社新書)
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なんと入学後すぐに、数学知識の不足を補うため高校数学を自らやり直しているんです。
そんな話、聞いたことないでしょう?
文系の学部に数学無しで入学したら、よほどの必要に迫られない限り、数学には二度と手を付けないのが普通じゃないですか?
身の回りや知人にそんなかたがいたら、教えてください。認識をあらためますので。
で、この印象深いエピソードについて詳しく書かれたものを見つけました。
『週刊東洋経済』2016.03.26号
連載 第432回『知の技法 出世の作法』高校レベルの数学知識はなぜ必要か
この連載、毎回非常に質が高いのですが、出世の作法については殆ど触れられず、もっぱら知の技法に重点が置かれるという極めて佐藤氏らしい内容。
いくらビジネス誌だからと言って、編集者も無理なタイトル付けるなよと思いますが。
佐藤 優と出世って、どう考えても水と油じゃん!というのは置いときまして。
特に私大文系の場合は、専門課程で数学が必要になる経済学部、経営学部、商学部などでも、数学を迂回して受験することができる。日本の大学の現状では、高校時代の知識の欠損を埋めることができるような教育体制になっていない。したがって、数学を必要としない科目だけを履修していれば、中学レベルの数学の知識がなくても経済学部を卒業し、さらに大学院に進学して修士学位を取ることは、現実に可能なのである。このような学位が、国際基準で役に立たないことは論をまたない。
理論的に可能なだけでなく、実際にそんな大学院生がいるということですね。
確かに変な話ではありますが、そこに疑問を持たず、現状に甘えるのが普通の人間というものでしょう。
ところが、我らが優さんは違います。
大学に入ってから、神学と数学は緊密な関係を持っていることを知って、もう一度勉強し直した。聖書神学の場合、聖書に出てくるキーワードを統計を用いて処理するので、統計学の基礎知識が必要になる。筆者は組織神学を専攻した。(中略)ここでは、神について理解するときに、数学の無限の概念の知識が必要とされた。
また、さまざまな教派に属する教会を類型的に見るときには、ライプニッツのモナドロジー(単子論)を用いることになる。モナドロジーと微分法は表裏一体の関係にある。
なーんだ、必要に迫られて勉強しただけじゃん!
だって院生だろう?そりゃ勉強も専門的になるさ。
と思ったあなたは、まだまだ優さんについて理解が足りませんね。
これは優さんが学部1年生の時の話です。
どひゃー! 優さん(おさるさんみたいだと今気づきました)すご過ぎ。
普通の大学生ならば合格してひと安心。さー遊ぶぞ!と指をポキポキいわしている時期に、優さんはもう己れの数学知識の不足を実感し、如何に埋めるかを考え始めていた訳です。
駄目だ、昔の自分に聞かせてやりたい。無駄だと分かっているけれど。
でもって、教養課程の数学講義で工学部(当時)の浦部治一郎先生と出会うのですが、このあたりは簡単に。
浦部先生は50年生まれなので、当時29歳で、工学部で教鞭を執る傍ら博士論文を準備していたが、教養課程の講義でも手を抜かなかった。特に数論の講義が面白かった。ただし、試験は厳しかった。
1年目には数学の単位を落とした。そこで2年目に再チャレンジして、何とか単位を取った。このときに筆者は、高校時代に空白となっていた数学をもう一度、本気で勉強しなおした。それにかかった時間は10カ月くらいだった。
優さんが単位を落とす? それだけ難度の高い講義に再チャレンジ?しかも高校時代の数学を自らやり直す?10カ月もかけて?
もうなぜの嵐(古い・・・)状態です。
既に学部1年生の頃から、凡人には理解できない領域に突入していた優さんでした。
このとき勉強した高校レベルの数学の内容は、その後、外交官試験の一般教養試験の数的推理や経済学の試験で役立った。
それはそうでしょう。学んだものを無駄にするような優さんではないですもの。そのぐらいは私にも分かります。
氏の書くものは難しくてほぼ理解できない私ですが、氏の人柄には興味が尽きません。同じ人間とは思えませんもん。
ちなみに『東洋経済』誌上におけるこの回のヘッダー(見出し)を、エントリの表題に使わせて頂きました。無理くりのビジネスとの紐付けが面白くて。あたかも格調高いブログのように見えるとしたら、佐藤氏のお力です。
この『東洋経済』の連載、優さんタイプのかたにはとても有益だと思いますよ。
もしいたら、の話ですが。
以上 ふにやんま