初の国賠提訴 来月、元船員ら40人
1954年に米国が太平洋・ビキニ環礁で水爆実験を実施した際、周辺海域で操業していた漁船の元船員や遺族ら約40人が1人当たり200万円の慰謝料を求め、5月9日に高知地裁へ国家賠償請求訴訟を起こす。日本政府が被ばくに関する調査結果を長年開示しなかった結果、米国へ賠償請求する機会を奪われたとして、国の責任を追及する。ビキニ事件を巡る国賠訴訟は全国初で、原告団結成のための準備会を24日に高知市内で開く。
水爆実験では、静岡県のマグロ漁船「第五福竜丸」の船員らが被ばくした。米国は55年、法的責任を問わない200万ドル(当時で約7億2000万円)の「見舞金」を日本側へ用意し、政治決着。他船の被ばくの実態は明らかにされなかった。
被ばく状況を国は検査していたが、86年の衆院予算委員会で旧厚生省はその記録を「見つからない」と回答。しかしその後、元船員らを支援する市民団体「太平洋核被災支援センター」(高知県宿毛市)が情報開示を請求し、2014年9月に国は延べ556隻の検査記録があることを認めて初めて開示した。約1万人が影響を受けたとみられる。
訴訟では、国が検査結果を意図的に隠したため、元船員らは米国への賠償請求権などを時効で失い、精神的苦痛を被ったと主張する。また政治決着後、追加調査や補償を放置してきた責任も追及する。検査記録の開示を受け、今年2月には高知県内の元船員ら10人が、船員保険による「労災」の適用を申請している。支援センターの山下正寿事務局長(71)は「ビキニ事件は政府により隠蔽(いんぺい)されてきた。支援の輪を広げたい」と話している。【岩間理紀】