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三菱重工に相次ぐ試練 客船で特損2375億円、三菱自支援に影響

2016/4/26 0:30
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 三菱重工業は25日、大型客船の建造が遅れたため2016年3月期に508億円の特別損失を新たに計上すると発表した。折しも20日には同社が筆頭株主の三菱自動車で燃費データの改ざんが発覚。2000年から三菱自が起こしたリコール隠し問題では三菱重工が中心となった「三菱御三家」で支えた。今回は三菱重工に相次ぎ襲いかかる試練が先行きに影を落としている。

下方修正について説明する三菱重工の宮永社長(25日、東京都港区)
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下方修正について説明する三菱重工の宮永社長(25日、東京都港区)

 「一から大型客船を造るのは初めてだったのに従来の客船の延長線上でやってしまった」。三菱重工本社(東京・港)で記者会見した宮永俊一社長は悔しげだった。顧客から何度も設計図を突き返されて、1年のはずだった基本設計に3年かかった。納入前の試運転で指摘された騒音の対策や、1月に3回発生した火災の影響で損失は雪だるま式に膨らんだ。

 16年3月期の連結純利益は前の期比40%減の660億円となる。大型客船の特損は今回が初めてではなく、累計2375億円に達した。1番船はすでに引き渡したが、2番船は「(予定の)年内引き渡しは難しい可能性がある」。大型客船の建造を続けるかどうかは「夏から秋に決める」。

 積極的な再編戦略で事業を見直し保守的な社風を変革してきた宮永社長。だが客船以外にも想定通りに進まずリスクが拡大する案件も目に付く。20年度としてきた国産ジェット旅客機「MRJ」事業の黒字化は相次ぐ納入延期でずれ込む可能性が出ている。米国では原子力発電所の事故で約9300億円の損害賠償を求められた。追い打ちとなるのがファンド経由も含めて約20%を出資する三菱自の不祥事だ。

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 三菱自は00年と04年に発覚したリコール隠しで販売が急減し経営危機に陥った。救いの手をさしのべたのが重工がとりまとめ役となった三菱グループ。04年から三菱自が発行した約6千億円相当の優先株を三菱重工、三菱商事、三菱東京UFJ銀行の御三家が中心になり引き受けた。経済合理性以上に「三菱を守る」というグループを貫く思いが各社を動かしたのだ。

 14年3月、三菱自は御三家が引き受けた優先株を買い取って消却し復配するなど再建に一定のメドを付けた。宮永社長は「長く続けてきた三菱自への再建支援が終わったら、16年度は次にどうするかを考える予定だった」と話す。独り立ちしようとする矢先に燃費データの改ざんが発覚した。

 三菱自の経営は再び危機に直面する可能性がある。宮永社長は三菱自の支援について「三菱グループのブランドへの影響、社会的責任、当社の業績への責任など総合的に考えて決めたい」と述べた。だが、今回は前回の支援の際と事情が違う。

 特損に苦しむ三菱重工だけでなく、三菱商事は資源安の打撃で16年3月期、連結決算に移行した1969年以降で初めて最終赤字に陥った。三菱東京UFJ銀行も利ざやの縮小や運用する国債の利回り低下が見込まれ収益環境は厳しさが増す。

 市場の見方は「(三菱自は)三菱重工にとってシナジーがあるとは思えない」(SMBC日興証券の大内卓シニアアナリスト)と手厳しい。三菱の論理を再び優先するのか。今度は難しい選択を迫られる。(篤田聡志、若杉朋子)

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