【シリコンバレー=兼松雄一郎】米アマゾン・ドット・コムが有料制の会員サービスへの誘導を強化している。日本では会員以外に対する無料配送の範囲を縮小し、米国では月単位でも契約できるようにした。同社はインターネット通販の物流インフラの強化を急いでおり、そのための資金を安定して得る基盤を整えたい考えだ。
日本では6日から会員以外に対する無料配送の対象を2千円以上の商品を注文した場合に限ることにした。2千円未満なら350円の配送料をとる。年3900円の有料会員になれば送料を無料とするサービスに誘導するのが目的だ。
米国では毎回の配送料が無料で、商品も通常より速く届く会員サービスで新たな方式を設けた。従来の年契約に加え、4月半ばから月単位で解約できる契約も選べる。新方式は年契約の会費99ドル(約1万千円)に比べて年換算で約33ドル高い。月単位の「お試し期間」を経て、年契約を結んでもらうことを目指す。
同サービスは動画配信とのセットだったが、新たに動画配信だけの月単位の定額サービスも始めた。年換算の料金は従来のセットサービスの年契約よりも高い。従来のサービスのお得感を打ち出し、誘導を図る。
安定収入を得る取り組みと並行し、専用の貨物航空機の確保にも動く。3月に米ボーイングの767型機20機のリースを受けると発表。同社とは貨物機購入の交渉にも入った。ドイツの南ドイツ新聞によると、同国で物流拠点に近い空港を買収する交渉も進めている。
アマゾンは「繁忙期のための輸送能力の増強」と説明。物流コストを抑えるため、将来的には自社でまとめて輸送する範囲を拡大し、物流会社への発注を減らす狙いがあるとみられる。昨年のアマゾンの物流関連コストは130億ドルを超え、売上高全体の13%近くを占めるまでになった。