(英フィナンシャル・タイムズ紙 2016年4月22日付)
ギリシャ・レスボス島に設置された難民キャンプ(2016年4月3日撮影)。(c)AFP/ARIS MESSINIS〔AFPBB News〕
欧州の政治家が欧州連合(EU)への難民流入と英国のEU離脱を防ぐのに忙殺されている間に、すべてのEU危機の母であるギリシャでは、マグマが再び静かにゆっくりと蓄積されつつある。
アテネでの話し合いは今回も実りのないものに終わり、22日にはユーロ圏財務相会合が開催されることになっていた*1。
そしてEUを昨年振り回したギリシャ危機と同様に、新たな難局が間もなくこの地にやって来る。ギリシャ政府が次の金融支援を受け取ることができなければ、7月に期限が来る35億ユーロの債務返済でデフォルト(債務不履行)し、「グレグジット(ギリシャのEU離脱)」の可能性が再び高まる恐れがあるのだ。
なぜそんなことが再度起こり得るのか。1年近く前、次第に切羽詰まっていった首脳会議でEUの指導者たちは860億ユーロの金融支援に同意し、ギリシャを崖っぷちから引き戻した。EUによる2度の同様な支援を批判することで政治家としての基礎を築いたギリシャの極左宰相、アレクシス・チプラス氏はこれに懲り、数カ月後には、3度目の支援プログラムのために厳しい財政政策を実行すると公約して選挙に臨んで再選を果たした。
このとき、欧州委員会の幹部たちはチプラス氏を、別人のようになったと褒めそやした。短気なヤニス・バルファキス財務相も排除されたことから、ベテランの過激派が熱心な経済改革派に変身したとEU本部は思い込もうとした。ところが、EUは支援の金融面の現実は言うに及ばず、アテネの政治の現実を見落としていた。
実際、昨年夏にまとめられた金融支援は、ギリシャのすべての災難に効く万能薬と言うよりは、関係者全員による問題の先送りにすぎなかった。年金制度や税制におけるごく一部の改革と引き換えに130億ユーロを緊急に貸し付け、ギリシャがデフォルトに陥るのを回避しただけだったのだ。
そのときでさえ、政治的な腕力を必要とする難しい仕事の大半は、債務の減免という政治的に紛糾する恐れのある問題も含めて、この新しい支援の第1次事後評価(レビュー)に持ち越されていた。
*1会合では具体的な合意はなく、近く政治的合意を目指すことになった。