南太平洋の島国、人口わずか約5万人のマーシャル諸島。米国によるビキニ水爆実験の現場だったこの国が、核保有国を相手取り、「核軍縮の義務を果たしていない」と、国家間の紛争を解決する国際司法裁判所(ICJ)に訴え出た。米国やロシアは裁判に応じず、応じたのは英国とインド、パキスタンだけ。3月に開かれた口頭弁論で、「法の支配」を信じる小国の訴えに耳を傾けた。
■「大国が義務果たさず」
「マーシャル諸島共和国がこの法廷へ来たのは、法の支配を信じ、それに頼っているからです」
3月16日、オランダ・ハーグのICJ。マーシャル諸島を代表して、トニー・デブルム前外相が英国に対する最終弁論に立った。
16人の判事が耳を傾けた。ひな壇中央にアブラハム所長(フランス)、その向かって右隣に日本の小和田恒判事が座る。
デブルム氏は、核兵器禁止条約の締結交渉を呼びかけた国連総会決議(2013年12月)など、核軍縮を求める一連の決議にマーシャル諸島が賛成してきたことをまず挙げた。
その上で、「我々が核不拡散条約(NPT)に加盟したのは、重大な動機からだった。その動機の一つが、英国に対するこの裁判の基礎をなすNPT第6条だ」と説明した。NPTで核保有国と認められた米国、英国、フランス、ロシア、中国の5カ国に対し、「誠実な核軍縮の交渉義務」を義務づけた条項だ。
「NPT第6条の下で厳粛に交わした約束にもかかわらず、マーシャル諸島がNPTに加盟して以降、核軍縮にはまったく進歩がみられない。逆の流れが起きており、英国はその核軍備を近代化し、改善し、増強している」
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朝日新聞国際報道部
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