防災の日 平時の備えで「減災」を
海と山に恵まれた日本は、他方で多くの災害に見舞われてきた。地震や津波、水害などで1000人以上の死者・行方不明者が出た巨大災害は1945年以降、12回を数える。
きょうは防災の日だ。10万人強の死者・行方不明者を出した関東大震災から92年。国民一人一人が防災への意識を高め、備えを強めたい。
火山災害で戦後最悪となる63人の死者・行方不明者を出した昨年9月の御嶽山(おんたけさん)の噴火は記憶に新しい。
火山活動は今年も全国で続く。口永良部島(くちのえらぶじま)・新岳(しんだけ)が噴火し、箱根山や桜島でも火山活動が活発化している。火山国日本は、大規模噴火の危険と向き合わざるを得ない。日ごろの備えが問われる。
御嶽山の教訓を踏まえ、今国会で改正活火山法が成立した。活火山の周辺自治体や観光施設に、避難計画の策定が義務づけられた。
また、昨年8月に起きた広島市の土砂災害を受けて、政府の中央防災会議は7月、火山対策と併せ、大規模な土砂災害についても防災基本計画を修正した。「避難準備情報」を活用し、住民に早めに注意喚起するよう自治体に求めた。
政府や自治体が、国民の生命や財産を守る防災対策を進めることは当然だ。ただし、防災の専門家は、被害から教訓を得て、その後に対策を取る被害先行型ではなく、対策先行型の対応が必要だと説く。それが、被害を減らす「減災」につながる。住民が災害への危機感を行政と共有できるかがカギだ。
きょう全国各地で防災訓練が行われる。長崎県の雲仙・普賢岳(ふげんだけ)周辺では、火砕流ではなく噴火災害に対応した訓練を初めて実施する。
また、徳島県では、台風被害を受けた直後に南海トラフの巨大地震が発生し、山間部に孤立集落が発生したとの前提で訓練を行うという。
災害は時を選ばない。それは歴史が示す。複合災害への備えは防災にとって欠かせない視点だろう。
地理的条件など地域に応じた防災対応が全国で必要だ。その中でも首都圏の対策は喫緊の課題である。
近い将来、首都直下地震や南海トラフ巨大地震の発生が予想される。地球温暖化による集中豪雨で大規模水害の発生を懸念する声も強い。
東京五輪・パラリンピックを前に、防災対策の総点検が必要だ。地震については、減災目標が掲げられたが、住宅の耐震化や火災対策の取り組みはまだ進んでいない。
東京一極集中が、帰宅困難者など首都圏での災害の危険要因を増やしている。一方、過疎化が進む地方は疲弊している。国力を分散するバランスの取れた国づくりが、防災の観点からも求められる。