春野ユリ - キーパーソン,仕事術,起業 12:00 PM
自信のない起業家が成功する5つの理由
Inc.:卓抜したクリエイティブな発想の持ち主について書かれたものをいろいろと読んでみると、時代を問わず、彼らのほとんどに共通する点があることがわかります。それは、一瞬たりとも自分の才能を疑わないように見えること。iPhoneはボタン1個にする(賛成です!)とか、NeXTのPCは キューブ型にする(最悪です!)とか、アップル社の創始者スティーブ・ジョブズ氏は自社製品に関する自分のアイデアはすべて素晴らしいと深く信じていました。スペースX社を始め数社の有名企業を立ち上げたイーロン・マスク氏は、自分には大量輸送用電気自動車が作れるといつも思っています。英バージン・グループ会長のリチャード・ブランソン氏は人に「変人」と言われるのが大好きです。こうした起業家たちには、自分を疑うことなどありえないことです。
そんな極端なまでの自信を持ち合わせていない人は(私は間違いなくその部類です)、自分はせいぜい二流の人間だと感じてしまうかもしれません。結局のところ、本当に賢い人なら、そう思いますよね。
ところがです。心理学のAdam Grant教授はTED Talkで独創的な発想をする人たちに関しておもしろい話をしていますが、その中で、最高に革新的な人たちの、自己認識の仕方に関する、多くの神話が実は間違っていることを証明しています。Grant教授はeコマースのスタートアップ会社に投資しないかと誘われたとき、そのような神話を誤って信じてしまったのでした。その会社の創立者は物事を先延ばしにしているように見えました。ビジネスの成功には不可欠な自信にも欠けており、万が一に備えた「バックアップの仕事」ばかりしていました。そのためGrant教授は一切の投資を断りました。結果として、今、話題沸騰のメガネブランドWarby Parker社立ち上げに参画するチャンスを逃すことになりました。
Grant教授は自分がなぜそんな大きな間違いを犯してしまったのかじっくりと調べた結果、もっともクリエイティブに思考する人間は、ある程度まで物事を先延ばしする性質があり、先延ばしすることで創造性が高まる場合もあることに気づきました。さらに、創造性の高い人たちは、極度に自信があるように見える人たちも含めて、「本当にこれでいいのだろうか」と疑ってみることが多いこともわかりました。しかし、そのせいで身動きが取れなくなるというより、その疑いをうまく使ってベストのアイデアに磨きをかけて強化したり、良くないアイデアを消去したりしています。
健全なレベルで自分を疑ってみることが成功につながる理由は次の通りです。
1. 手っ取り早い答えに飛びつかない
あなたはどのインターネット・ブラウザを使っていますか? 研究によれば、Internet ExplorerやSafaiを使う人よりFirefoxやChromeを使う人のほうが仕事のパフォーマンスが高くなりがちだそうです。それは、FirefoxやChromeのほうがブラウザとして優れているからではなくて、デフォルトでインストールされているブラウザでなく別のものを自ら進んで探すような人たちは、どのような問題に関してもお手軽な解決策には飛びつくことが少ないからです。
2. 頭が良いのかもしれない
あなたは自分の新しいビジネスが成功すると固く信じていますか? もしそうだとしたら、ごめんなさい、そういう人はちょっとおかしいです。まず、統計的観点からそれは間違っています。新しいビジネスの96%は10年以内に失敗します。しかし、それは無能な起業家たちの話であって、あなたは天才だとしましょう。それでも、あなたのビジネスは低迷して、まったくコントロールがきかなくなる要因がいくらでもあります。マーケットの低迷、経済破綻、新しいイノベーションによりあなたのビジネスが世の中で求められなくなる、法律や税制の変化によりビジネスモデルが合わなくなる、などなど、きりがないぐらいです。Warby Parkerの創設者たちが、ビジネスが失敗した場合に備えたラインアップを備えていたのは、彼らの頭の良さの証です。
3. たくさん質問をする
ビジネスを立ち上げるとき、あるいはどんなことを達成しようとしているときも、これをするのが何よりも賢明です。自分に自信のある人たちは、自分の正当性を断言して、他人に対して自分のアイデアをくまなく語り、成功するための計画を語ります。自分に自信の無い人は他人の意見や提案を求めます。後者は意見交換を通して学ぶことができます。その結果、すぐに前者より賢くなります。
4. 自分と異なる意見に耳を傾ける
チームは多様性に富んでいるほど賢くなることが、さまざまな実験により着実に実証されています。知的レベルが高くなるのは、そのチームに多様性があるからではなくて、チームが物事を決定するまでに、話し合い、意見の不一致、コンセンサスの構築という過程を経るからです。自分に完全に自信のある人は、自分と意見の合わない人の話は聞きません。相手を説得するか無視するかです。自分に自信の無い人は、もしかしたら自分は間違った道を歩んでいる可能性があることを受け入れています。軌道修正が必要な場合は、そのほうがずっと有利です。
5. 失敗は成功にたどりつく途中でしかないと考える
世の尊敬を集める天才の多くは、多くの作品を生み出し、傑作を生み出すまでに数えきれないほどの駄作を産出しています。現に、クラシック音楽の作曲家のことを考えてみればわかりますが、才能のある人ほど作曲数が大変多いものです。
多作の天才と凡人の違いは、失敗したときの態度だとGrant教授は指摘しています。まず、「これは失敗だ」と思うことから始まるのは共通ですが、そこから先に違いが出ます。私たち凡人はそれを内面に取り込んでしまい「自分はダメだ」と思ってしまいます。でも才能のある人たちは次のように考えます。「最初の試作は何度か失敗するものだ。自分はまだ成功に至る途中なのだ」と。
することなすことすべてをうまくやろうと思わなければ、うまくいかなくても驚いたりイラついたりする必要もありません。「まだ成功にたどりつく途中なのだ」と思って、また何度かやり直してみましょう。それでもだめなら、もう少し頑張ってみてください。
真のイノベーションと限りない成功を手にするには、それがもっとも確実な道です。
5 Reasons True Innovators Are Full of Self-Doubt |Inc.
Minda Zetlin(訳:春野ユリ)
Photo by Shutterstock.
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