|
|
新・あの日 あの時 −８− 聖教・２００９年８月８日付
・・転載開始・・
貴婦人たれ
大阪府堺市に住む寺田亨（きょう）（堺総県東総区総合婦人部長）の一家には、信仰の原点
がある。大阪の戦いで、母の百合子が班長として奔走した。若くして夫を失い、市場で魚の行商
をしていた。黒いゴム長靴に、くわえタバコ。男勝りで、強面（こわおもて）の仲買人も顔負けでる。
１９５６年６月２７日。青年部の池田大作室長を迎え、班長会が行われた。男性陣に混じり百合子が
最前列に腰を下ろす。じっと室長が見つめる。隣にいたものに聞いた。
”この辺りで、いくらで水油は買えるかな？” ”はい、百円・・・ほどです” ふたたび百合子の顔を
見つめた。レントゲンと呼ばれるほど、ずばり本質を見抜く。”あなた、班長だね” ”はい！”
野太い返事。周りの男性に聞かれないように、そっと、ささやいた。”女性は身だしなみが大切だ。
百円あるかい？” 小さくうなづく。”すぐに水油を買ってきて、頭につけなさい”
百合子を鏡を覗き込んで赤面した。顔は日焼けで真っ黒。頭はクシャクシャ。髪をかき分けると、
ところどころに魚の鱗がピカピカと光っている。彼女のように苦労してきた女性が、白百合のように
輝いてこそ学会は伸びる。 常々、室長は語ってきた。”貴婦人とは、相手がどんなに高い立場の高い
人だろうと、恐れなく堂々と対話できる人です” ただ、お化粧をしてドレスアップすればいいというの
ではない。
”もう一つ、相手がどんな身分や境涯であろうと、なんの偏見もなく、大切にしてあげられる人。それが
貴婦人です” どうせ魚屋のおばはんや。開き直っていた百合子。それが自分の住む世界を狭くしていた。
水油をつけた日を境に”女性として、母として尊敬されなければ”と考える。子供が嫌がっていたタバコ
とも縁を切った。
室長のもと大阪を弘教に走る。山口作戦にも志願した。不思議といく先々で好感を持たれる女性になった。
教学の試験管
国鉄・鶴橋駅を降りると、蒸し暑い空気が肌にまとわりつく。堺支部の阪井鶴和は関西本部へ急いだ。
５７年（昭和３２年）７月２７日。教学試験の口頭試験を翌日に控え、池田室長を中心に役員会があった。
阪井は伝言を預かっていた。堺支部の中心者からである。”３９度近い熱があるんや。今日は休む。
明日の試験管はできへん”。軽い口調だった。 風邪か、しゃあないな。阪井は何の気なしに室長に
伝えた。 雷のような叱咤が飛んだ。”明日のことが今からわかるのか。戦わずして病気に負けているで
はないか！” 予想もしない答えに凍りついた。”教学の試験管は、師匠・戸田先生の名代として参加
させていただくのだ。試験管として誇りを持つのが弟子ではないか！” 一同は静まりかえっている。
”今日、熱があるから、明日も下がるまい。だから欠席する。それでは戸田先生の名代としての誇りも、
喜びも、戦いもない！” 決して無理をしろというのではない。”大阪の戦い”でも病人は休ませ、睡眠や
食事にまで気を配った。要は一念である。戦う前から臆病風に吹かれる。負けと決め込む。
かねて周囲からも心配されていた幹部だった。”彼は、試験管として失格だ” 真っ青になっている阪井に
指示を与えた。その幹部に電話をして、今話した内容を一言も違えず伝えなさい。
阪井は事務室に飛び込んだ。震える手でダイヤルを回す。用件を伝え、すぐ室長のもとに戻った。
”なぜ君に電話をさせたか、分かるかい。私に直接言われる以上に厳しく受け止めるだろう。
おそらく、今頃、必死に題目をあげている。これで病魔を打ち破ることができる。厳愛の心情から出た
叱咤である。その幹部が見違えるように成長したのは言うまでもない。
・・・続く・・・
http://
|
|