森口朗(教育評論家、東京都職員)

 エフセキュアの社員だったK氏が、エフセキュアの顧客であるフェイスブックの個人情報をリスト化し、拡散したとして大問題になっています。ここには、我が国の喫緊の課題が凝縮されており、全ての日本人にとって他人事とは思えないので、今の段階で論点を整理しておきたいと思います。

その前に事件概要を

(事件概要)

エフセキュアの社員であるK氏は、同時に「しばき隊」やその後継団体に所属する左派活動家だった。

一方、はすみとしこ氏という漫画家が今年になって一部でブレイクしたが、そのマンガが難民や在日コリアンに批判的だったために別の一部の人達から「レイシスト」というレッテルを貼られていた。

K氏はフェイスブックで、はすみとしこ氏に「いいね」を押した人達の、学歴や勤務先といった個人情報をリスト化し、インターネット上で拡散し、活動家仲間と共にリスト化された人達への個人攻撃(勤め先への情報提供や個人宅訪問)を推奨した。

ところが、K氏自身も様々なところで自分の情報を書いていたために、エフセキュアの社員であることが突き止められた。

ネット市民がエフセキュア本社の社長に事件の概要を伝えたところ社長は対処することを明言し、エフセキュアはK氏を自主退社(おそらく)させることで事件の収束を図ろうとした。

その後のネット市民の調査によりエフセキュア日本法人の社長が、韓国系ITセキュリィ企業の社長であったことが判明した。


 この問題で明らかになった我が国の課題を大きいと思える順に列挙していきたいと思います。

1 暴力的で独善的な人が「平和」や「人権」を大声で叫ぶために、真っ当な人達がこの言葉に嫌悪感を感じてしまう
 話が大きすぎると感じるでしょうが、私はこれが最も深刻な課題だと思っています。世界がIS(イスラムステイト)や共産主義国の拡大を許さないのは、まさに「平和」と「人権」を重んじるからですが、日本では刺青を見せ付けて他人を脅すような人間が「平和」や「人権」を叫び、朝日新聞や地上波TVがそれを当然のように報道するために、ここに共感できない人が、この概念自体に懐疑的になっています。

2 左派(共産党や社民党などの主張に共産する人達)のレッテル貼りはメジャーメディアで報道されるが、右派がレッテル貼りは無視される
 はすみとしこ氏に限らず在日コリアンに批判的な人達に「レイシスト」のレッテルを貼ったのは左派も市民団体でした。私は特定の人達に対するステレオタイプの非難=レイシズムには一切与しません。しかし、今レイシストの烙印を押される人達が活動する前から今に至るまで、韓国本国はもちろん在日コリアンによる日本人全体への民族差別発言が繰り返されています。また、左派により自衛官や警察官に対する職業差別発言も堂々と行われています。こういった発言こそレイシズムだと思いますが、それを「レイシズム」として報道するマスメディアはほとんどありません。

 また、安保関連法案制定時には安倍総理を「叩き切る」と表現した著名人や「安倍しね」というプラカードを掲げた人達に右派が「テロリスト」というレッテルを貼りましたが、それもまったく報道されていません。

3 左派が違法不当な手法で敵を攻撃するときは黙認され、右派が同様の手法を取る時には厳しく糾弾される
 右派が今回のK氏と同様の手法。例えば「安倍しね」プラカードにフェイスブックで「いいね」を押した人の「氏名」「学歴」「勤務先」などの個人情報をリスト化し、勤務先への通報を推奨したら、新聞やテレビは大騒ぎをするでしょう。しかし、K氏の行動は今のところMXTVを除き、まったく報道されていません。