与野党の対決となった衆院北海道5区補欠選挙は、自民党の和田義明氏が、野党統一候補の池田真紀氏に競り勝った。

 だが、与党としては安閑としてはいられまい。

 一つは、同時に投票された京都3区では与党が候補を立てられず不戦敗となり、民進党の泉健太氏が当選したことだ。

 もう一つは、過去3回続けて自民党が議席を占めてきた北海道5区で、当初の予想以上に野党に追い上げられたことだ。

 接戦の理由は明白だ。民進、共産、社民、生活の各党が足並みをそろえ、統一候補を推した野党共闘の成立である。

 同区は故・町村信孝前衆院議長の地盤だが、野党が一つにまとまっていれば、実は与野党の得票は拮抗(きっこう)していた。

 例えば14年の前回総選挙。町村氏の約13万票に対し、民主候補約9万5千票、共産候補約3万票と町村氏が大差をつけた。だが、民主と共産の得票を合計すれば、当選した町村氏との差は約5千票に縮まる。

 これまで野党がバラバラに候補を立てていたことが、与党を利していたのは明らかだ。

 今回、敗れはしたものの接戦となったことは、野党共闘が、与党に迫る大きな力になりうることを示したと言える。

 昨年9月の安保法制成立後、初めての国政選挙だった。法制への反発が市民の連帯を生み、野党を結びつけたことの意味は大きい。市民が選挙運動の動画をつくり、インターネットで拡散するなど、市民主導の動きも広がった。

 朝日新聞の出口調査では、安保法制でも、政権の経済政策でも有権者の評価は割れた。

 野党各党は、共闘の目標や原則をいっそう明確に語るとともに、夏の参院選に向けて、32ある1人区で共闘の動きをさらに広げるべきだ。

 政治に緊張感を取り戻すためにも、自公連立政権に代わりうる、もう一つの選択肢を確かな形にできるかが問われる。

 与党にはゆるみが目立った。北海道5区では、応援のため現地入りした自民党議員が「巫女(みこ)さんのくせになんだ」と発言。京都3区補選は、育休宣言後に不倫した前自民党議員の辞職に伴う選挙だった。政権運営の見直しが迫られる。

 補選の結果次第では、安倍首相が衆参同日選に踏み切る可能性も指摘されてきた。

 だが、前回の衆院解散から約1年半しかたっていない。まして熊本地震で大きな被害が出るなか、国会議員の大半がいなくなる同日選に道理はない。