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シャラポワが失った収入はいくら?
米国スポーツ「巨額マネー」の実態(上)

長野美穂
2016年4月8日
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「もう庶民には観戦できない」
高騰する米テニス大会のチケット代

ジョン・イスナー選手のサーブに飛びつく錦織圭選手

 メキシコ国境に近いカリフォルニア州の砂漠の真ん中のリゾート地、インディアンウェルズ。3月、焼けて茶色くなった土地にニョキニョキ伸びる巨大なヤシの木と灼熱の太陽の下、世界のトッププロテニス選手たちが、2週間の熱戦を繰り広げていた。

 「あなた日本人? じゃ、ケイ・ニシコリの応援? あ、見て。マイケル・チャンがあそこに座ってる。チャンが現役だった頃を知ってる? 彼の試合は見てて本当に面白かった」

 ワイオミング州から夫と共に観戦にやって来たという女性は、そう言った。同大会会場での観戦は今年で連続8年目という、筋金入りのテニスファンだ。目の前のコートでは、錦織圭選手と米国人トッププレーヤーのジョン・イスナー選手の試合が始まろうとしていた。

 「でも、生で試合を見られるのは、今年で最後。チケット代の値上がりがすごくて、来年私たちがここに来るのは金銭的にもう無理だから」

 隣に座っている彼女の夫は、その言葉にうなずいた。

 この夫婦は、今回1週間の観戦チケット代として、1人当たり1600ドルを払っていた。ホテル代などの旅費を入れると、夫婦での観戦費用は合計で5000ドルを超える。8年前、彼女たちが払った1週間分のチケット代は1人あたり400ドルだったというから、8年でチケット価格は4倍に跳ね上がったわけだ。

 「富裕層じゃない私たち庶民には、テニス観戦はもう簡単に手が届かない」

 イスナーの高速サーブが錦織のコートに打ち込まれるのを見ながら、彼女はため息をついた。


 インディアンウェルズ大会は、グランドスラムと呼ばれるテニスの4大大会に次ぐ規模の、「マスターズ1000」レベルの大会の1つだ。世界中で9つあるマスターズ1000の中でも、同大会は「5番目のグランドスラム」と呼ばれ、格上扱いされている。チケットの売り上げにつながる観客動員数や施設の充実ぶりが、他の大会と比べて抜きん出ているからだ。

 コートサイドの席には、近隣のリゾート地や高級住宅地に住む富裕層の中高年客がずらっと並ぶ。昔、ハリウッド俳優らのお忍びの遊び場だったパーム・スプリングス地区に近いこの大会は、「砂漠のスーパーリッチ白人の社交場」と呼ばれ、今年で開催41回目を迎えた。

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長野美穂(ながの・みほ)/東京の出版社で雑誌編集記者として働いた後、渡米。ミシガン州の地元米新聞社でインターン記者として働き、中絶問題の記事でミシガン・プレス・アソシエーションのフィーチャー記事賞を受賞した。その後独立し、ネイティブ・アメリカンの取材などに没頭。ボストン大学大学院を経て、イリノイ州のノースウェスタン大大学院でジャーナリズムを専攻。カリフォルニア州ロサンゼルスの米新聞社での記者を務め、フリーランスジャーナリストとして活動している


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