英ロンドンの書店フォイルズが店内に設置した子供向けグッズのコーナー
昨年5月にマンハッタンの書店「シェークスピア&カンパニー」を買収したデーン・ネラー氏は、その直後に店舗を一時閉鎖し、自分が入ってみたくなるような書店を作り上げた。
「古いやり方を作り変える必要がある」と語る同氏は、買収金額は明らかにしていない。「人々は集まって話をし、親しくなりたいと思っている。だが、書店は生産的でもある必要がある」と述べた。
わずか数年前には、既存の書店が2つの脅威をはねつけて存続できるかどうか疑問が投げかけられていた。つまり、インターネット上で安売りされる書籍の脅威と、簡単にダウンロードできる電子書籍の脅威だ。しかし、デジタル書籍の販売の勢いが落ち始めており、実店舗の概念を刷新しようとする起業家が出現している。彼らはネット書店の最低販売価格と競うことなく、ウェブに対抗できるような手法を用いる。
マンハッタンの書店「シェークスピア&カンパニー」を作り変えたデーン・ネラー氏
Photo: Allison Scott/The Wall Street Jo
例えば、ネラー氏は「エスプレッソ・ブックマシン」と呼ばれる机ほどの大きさの機械を製造する会社の最高経営責任者(CEO)でもある。この機械だと、新しいペーパーバックの書籍を5分以内で印刷できる。エスプレッソ・ブックマシンは価格が8万5000ドル(約930万円)で、シェークスピア&カンパニーのフロアの目立つ場所に置かれている。
同氏は「いわば秘伝のソースだ。この機械のおかげで、書店のフロア面積をかなり小さくできる」と話した。
昨今、独立系書店は急速に増えている。米書店協会によると、2015年には1712の書店が2227店舗を展開している。この数字は5年前には1410書店で1660店舗だった。米アマゾン・ドット・コムでさえ、シアトルに実店舗を開設した。同社はカリフォルニア州ラホーヤに2店目を出店する計画だ。
独立系書店のライバルである大手書店チェーンは、あまり順調でない。例えばバーンズ・アンド・ノーブルの店舗数は、09年1月時点の726店から現在は640店に減っている。かつて米国2位の上場書籍販売会社だったボーダーズ・グループは11年に経営破たんした。ブックス・ア・ミリオンは昨年12月、1株3.25ドルで買収されて株式非公開になった。
ネラー氏がシェークスピア&カンパニーを買収した後、マンハッタンのアッパーイーストサイドにあるこの書店の様子は全く違うものになった。店内で書籍のために割かれる面積は40%近く減った。しかし、棚に並ぶ書籍のタイトルは、より頻繁に入れ替わっている。この結果、9月から3月末までの7カ月間の書籍売上高は、別のオーナーだった7カ月間と比較して10%増えたという。
厳選された書籍が並ぶシェークスピア&カンパニーの店内
Photo: Allison Scott/The Wall Street Journal
同氏は、売り上げ増の理由について、書籍の周到な選択、カフェ新設による来客数の増加、それに前述の「エスプレッソ・ブックマシン」にあると考えている。
同氏はこのマシンについて、「まだ稼働したばかりだが、書物の在庫にそれほど資金を投じなくて済むし、かなり小さな店舗をより効率的に運営できる」と述べた。同氏からすると、「(これまでの書店の方式だと)過剰に注文して、返品する書籍が多すぎる」という。
ネラー氏が店舗の刷新を行った際、同氏の小売りとテクノロジー分野での経歴が生きた。食料品店・カフェの「ディーン&デルーカ」のCEOだった同氏は、書店の正面にカフェを設置し、多数の小さなテーブルを並べた。
店内の目立つ場所に置かれた「エスプレッソ・ブックマシン」
Photo: Allison Scott/The Wall Street Journal
同氏は「アマゾンは、わたしにとっては問題でない」と言明。「顧客がここに来るのは、書籍の価格以上のものを求めているからだ。あいさつして欲しいと思っているし、コミュニティーの感覚を欲しがっている。また、文化的な要素も強く望んでいる」と話した。
同書店を訪れる顧客は、手に触れられる体験も好んでいる。ブロンクス地区に住む3児の母親ジュリアナ・チャールズさんは最近、9歳の娘のために書店で本を立ち読みしていた。あらゆる本を手に取って読める実店舗の方が、ネット書店より好きだと話した。
この書店のメインフロアはわずか2000平方フィートで、旅行、児童、ハードカバーのベストセラーなど、伝統的なカテゴリー別に本が並んでいるが、その数は限定的だ。ネラー氏は「カギとなるのは、動く在庫だ」と説明。「書店というのは、本を返品できるから過剰在庫を抱えることが多い。しかし利益を生むには速度が必要だ」と語った。
「エスプレッソ・ブックマシン」を使って印刷された書籍
Photo: Allison Scott/The Wall Street Journal
ネラー氏によれば、エスプレッソ・ブックマシンには2つの目的がある。1つは自己出版で、顧客はブックマシンを使って、自分で書いた家族史、小説、あるいは詩集を印刷できる。シェークスピア&カンパニーはこうした著者兼顧客たちに149ドルから549ドルまでの出版パッケージを提供している。
ブックマシンはまた、これまで出版されたタイトル700万種類以上にアクセスし、印刷できる。多くは著作権切れのものだ。残りは伝統的な出版元から来たもっぱら古いタイトルだという。
By JEFFREY A. TRACHTENBERG
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