この記事は『サイト別 ネット中傷・炎上対応マニュアル』を参照して記載する(記事末に書籍へのリンクあり)。
炎上とは
不祥事などをきっかけに爆発的な注目を集め、それに伴い非難・批判・誹謗中傷などが多数書き込まれる事態または状況を指す。
きっかけは様々であるが、インターネットでの不用意な発言や写真の投稿などが多く、この傾向はSNSやスマートフォンの普及により一層の拡大をみる。
TwitterやFacebookはリツイートやいいねにより他者への情報拡散が猛スピードで広がる。情報拡散時の容易さ(僅かな動作で気軽にシェアできる)により、炎上との親和性は抜群。
個人SNSアカウントはどうすべきか
- 反論などはしない
- 炎上したツールとともに他のツールも即削除
- 削除前のログは全て保存すること
これが基本。アカウントを残すと過去の書き込みからプライバシーが暴かれる・不適切な行動を多数指摘さるなど炎上拡大の要因となる恐れがある。
アカウント削除は「逃亡」などと揶揄されることもあるが、残しておくことのデメリットの方がはるかに大きい。
なお、ここでは炎上の発端となった「個人」アカウントのことを指しており、企業のアカウントのことではないことを申し添える。
収束手順
従業員が炎上させてしまった場合を考えると、以下のような手順となる。
1 事実関係の確認
- いつ、どこで、誰がそのような言動・行動をとったか
- どのような媒体でそれは起きたか
- 行動をとった理由は何か
- 批判に対し感情的な反論や罵倒をせず、今後取るべき対応との間に矛盾を生じさせないこと
2 早期の見解発表
把握した事実関係をもとにした見解の発表を行う。
- 現在把握している事実関係
- 事実関係を前提に何をするかの対応策
- 対応策をいつまでに実施するか
- 実施した結果についていつまでに発表するか
このような情報発信により全体像の把握が容易となり、憶測が書き込まれにくくなる。誠意な姿勢を見ることで抽象的な書き込みは減少に転じるだろう。
発表方法はプレリリースを使用する・HPの見やすい場所への掲示がベター。企業SNSアカウントには見解ページへのURLを設置すると良い。
3 企業アカウントの処理
企業のアカウントが炎上の発端となった場合に、削除してしまうと大きな批判を浴びてしまう恐れがあるので絶対にしてはいけない。
むしろ事実関係の経過など、その時点でどのような対応をとっているのかをつぶさに発信し続けることで、トラブルに対し真摯に対応している姿勢をアピールできる良い場所となる。
アカウント削除については「個人」の場合と「企業」でしっかりと考えを分ける必要があるだろう。
放置のリスク
- 炎上は放置しても数日、長くて1か月で収束することが多い
- 収束してもネット上の情報は残り続ける
- 拡散した情報には虚偽の情報が含有していることも多い
- 以後、どのような情報も「本当のこと」として受け取られかねない
- 対応や主張の機会が失われることになる
これらのことを鑑みると、きちんとした対応をするほうがリスクは少ない。あとから事情を知らない人が見ても、「この企業はこのように対応したのだな」と把握してくれるだろう。
よほど些末な事案でない限りは、放置せず真摯に対応すべきだろう。
炎上させないために
- SNSは公開されていることを認識
- SNS上の友人は炎上リスクの一であることを認識
- SNSは友人知人への連絡用ツールとして用いると危険だと認識
- 多様な価値観を認め、批判せず、されることもあると想定する
- 批判に対する中傷や人格否定はしない
- プライバシーを侵害しない
- 差別的・攻撃的な発言はしない
- 政治宗教や信条などセンシティブな発言はしない
- 著作物侵害に注意する
- 他人に対する中傷・悪口の書き込みはしない
- プライバシーに関わる書き込みはしない
- 犯罪行為の告白や違法行為を助長するような書き込みはしない
- 企業秘密を書き込まない
- 公式の場以外で企業に関する情報を書き込まない
「SNS使用禁止」では、極端であり時代に即わず上手くいかないかもしれない。ではどうすれば良いかというと、従業員全員のリテラシーを底上げして最悪の事態を防ぐ必要がある。
SNSアカウントで友人同士でもダイレクトメールを使用するなりすれば公の目は避けられるだろうし、使い方次第というところもある。
これが常態化してうっかり企業秘密を露見するような事態を避けるのであれば、やはりSNSでは企業の話題そのものを避けてもらうなどの教育が必要なのだろうが...
参考書籍紹介
冒頭でインターネットにおける10の炎上具体例を示し、それぞれについて法的に分析し解りやすく解説している。過去の裁判における判決事例を引用している部分も多々見受けられた。
さらに、GoogleやYahoo!をはじめ検索サイトへの削除申請マニュアルも完備しているため、実務的にも実用に耐える内容となっている。
リスクマネジメントに関わる立場の方もこの書籍内容を把握し、傍らに置いておけばいざという時の参考となるだろう。また、従業員のリテラシー教育を実践する上でのたたき台にもなるに違いない。
是非ともご一読を。