【最終回】羅針盤と、ともに歩く
最終回は、「com-pass 女性筋疾患患者の会」代表のおふたりそれぞれに想いを綴っていただきました。
こちらは、西岡奈緒子さんです。これからもcom-passの活動、応援し続けます。
伝わらなかったら、どうしよう。
せっかく勇気を出して声に出しても、聞いてもらえなかったら、どうしよう。
声に出したことで、さらに自分が孤独を感じることになったら、どうしよう。
私が自分の病気を通じて経験したことについて、誰かに伝える日がくるとは、子供のころは思っていなかった。
それどころか、病気のことを知られないように生活していて孤独に感じることがあった。
今でも「どうしよう」と感じることはある。何か困難なことにであったときに、
どうやって助けてもらうための声をあげようか、悩むこともある。
けれど、私は一人ではないと思う。同じような経験をしている人たちや、
相談できる医師をはじめ専門職の先生たちなど、病気について相談する機会を得るごとに、
不安の渦から抜け出す術を身につけてきたように思う。
「エイヤ」と勇気をもって自分の不安を伝えることができるようになってきた。
でもやっぱり、伝える前には悩んで、胸がざわつくような思いをすることもある。
うまく伝えるのが難しいと感じることもある。
ハートネットピープルに寄稿するのは今回が最後だが、2009年に
「com-pass女性筋疾患患者の会(クリックするとNHKのサイトを離れます)」が立ち上がってから7年間、
この場とともにcom-passは輪を広げてきたといっても過言ではない。
たった2人から始まったこの会は、会員数200名にせまる勢いで、たくさんの出逢いを与えてくれている。
つながることができた方たちに感謝の気持ちを伝えたい。
どうしよう、という不安。
誰でも不安を感じたことがあるだろうけれど、それを声にして伝えるのには、勇気がいる。
com-passは「女性の筋疾患患者の当事者が対象」という枠のなかで、できるだけ敷居を低く、気楽にお喋りできる場所でありたい。
一歩踏み出して、誰かと話してみることができる場所になりたい。
患者会に入るのにも、勇気は必要だと思う。
私自身、同じ病気の人と会うのが怖いと感じることがあった。
自分よりも病気が進行している人に会うと、自分と重ねてしまって不安が強くなるのではないかと思っていたことがある。
しかし、今ではいろいろな人と出逢って、経験を教えてもらったり、逆に自分が経験したことを伝えたりすることに価値を見出すようになった。病気のことを知ってもらいたいと考えるようになった。
ハートネットピープルが終了してしまうのは残念だが、「終わりはきっと何かの始まり」と信じたい。
空や海を見ると、誰かとつながっていると感じることができる。
筋疾患を抱えていると、できないことが増えていき、不安が尽きない。
けれど、大きな自然の流れのなかで、私にできることは限られているのではないかと考えることがある。
先日、西表島へ行ってきた。
リバークルーズの船に乗ったときに、霧を見ることができた。
時間帯や湿度など、限られた条件でしか見ることができないそうだ。
遠目に見ると、その先に何があるか分からない。霧のなかを進んでいくと、いつの間にか霧の先にたどり着いて、
霧がどこにあったのか分からなくなった。
私は不安に押しつぶされそうになることもあるが、すっと霧が晴れるように、先が見えることもある。
ジタバタせずに、限られた条件を楽しめるようになりたい。
そして、いつも誰かとつながっていると感じたい。
最後に、私が初めてハートネットピープルに寄稿した「com-pass 女性筋疾患患者の会」始動!から再掲します。
「com-pass 女性筋疾患患者の会」
女性筋疾患の患者さんたちが、一人で迷うことなく、
一緒に方向を見つけられる 「羅針盤 (英語でcompass) 」 のような役割の会を目指しています。
英単語 compass の語源は、com- 「ともに 」、-pass 「歩く」 です。
また、compass には、「(目的を)達する,成就する、十分に理解する」 といった意味もあります。
患者ならではの悩みなどを共有してお互いに理解しつつ、コンパスで輪を描くように、みんなでつながっていきたいです。
今まで、ありがとうございました。これからも、よろしくお願いします。
西岡奈緒子
2016年03月31日(木)
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