「ネコ踏んじゃった」という曲があるが、実際にネコを飼ってみて分かるのは、ネコを踏んでしまうことなどまずありえないということである。
いま我が家では狭い空間に4匹のネコがうろちょろしているが、そのような生活空間においても、ネコを踏んでしまうことはない。どれだけボーッとしてようが、まったく踏まない。
バガボンドの12巻に、武蔵が道に落ちていた釘をうっかり踏み抜いて自分の甘さを悔やむシーンがあるが、それで言うならば、うっかりネコを踏んでしまうというのは、剣豪でなくとも悔やむレベルの甘さである。
ネコ踏んじゃわない。これが真実である。
むしろ、ネコは蹴ってしまうものである。これは断言できる。日常的に起こる。ネコと暮らすことは、蹴りたくないのにネコを蹴ってしまう葛藤と戦いつづけることである。
第一に、ネコには布団やら袋やらにもぐりこむ習性があり、これは油断すると蹴ってしまう。モコッとしていると思ったらネコ、何かにつまずいたと思ったらネコである。蹴ってしまえば、フシャーッと言われる。そんなまぎらわしいところにいるほうが悪い、と言いたくなるが通じない。
第二に、ネコは真夜中に暗闇のなかでジッとたたずんでいることがあり、私が夜型の生活をしているときに台所に向かうと、途中でガッと蹴ってしまう。やはりフシャーッ!と言われるんだが、知らん。そんな暗闇にいるほうが悪い。なにを真っ暗闇でたたずむことがあるのか。
そして最後、これがいちばん多いんだが、ネコには飼い主の足にまとわりついてくる習性があり、人間が家の中を歩いている時など、甘えているのか何なのか、その足元にちょこちょことついてくることがある。するともう蹴ってしまう。蹴りたくないのに蹴ってしまう。
一流のドリブラーは足に吸い付くようなドリブルをするものだが、そういう意味で言えば、甘えているネコというのは、人間の足に吸い付くように動くのだ。一時的にメッシのような気分になる。ネコを蹴りながら冷蔵庫まで移動するメッシ。それが私である。
年俸はガム二個。