いつか書いたことかもしれませんが、本を読んでいて気持ちいい瞬間は、
『自分がぼんやりと言葉にできないまでも思っていたであろうことに、
言葉として出会うこと』
だと思います。
今回紹介する心に龍をちりばめてという本はまさに自分の思っていたことを、
明文化してくれているように思います。
本屋でタイトルのかっこよさに惹かれて購入したので、
著者の白石一文さんのことも存知あげなかったのですが、
『一瞬の光』という作品で有名みたいですね。
では、私の印象に残った言葉の前に少しだけあらすじを。
(重要な部分ではありませんが、ネタばれもあります。ネタばれが嫌いな方は、
読み進めないようお願いします。)
あらすじ
主人公 小柳美帆
なろうと思えばモデルや女優やアナウンサーになれたほどの美貌の持ち主。
現職は、東京にてフリーのフードライター。
みなしごであり、児童養護施設の出身。
34歳。
付き合いをしている相手はエリート記者の黒川丈二。
仲間優司
児童養護施設で美帆と同級生。
中学時代には、美帆に対して、
「俺は、お前のためならいつでも死んでやる」との言葉を残す。
故郷、福岡で美帆と再会。
再開した際にはヤクザとなっており、その背中には大きな龍の刺青があった。
黒川丈二
上述の通り、美帆の恋人。
国会議員を目指す野心家。
***
ものすごい美貌の持ち主と野心家とヤクザ。
これまた、ありふれた展開のような気もしますが、
心理描写が上手いのか、飽きずにむしろ引き込まれて読むことが出来ました。
本書は、この3人の運命が交錯していきます。
私の思い入れのあるエピソードと心に残った言葉
ある日、美帆と優司は飲んだ帰り道、隅田公園にて少年によるホームレス狩りに遭遇します。
少年4人によるリンチの現場を見るやいなや、
優司は駈け出してホームレスを助けるために、
少年たちに暴行、全員の腕を折り、重傷を負わせます。
その後、近所の土産屋で木刀を購入。
暴行されていたホームレスの背中には綺麗な観音様が背負われていたことから、
元極道だろうということで、木刀を手渡し、次回の襲撃に備えさせます。
その5ヶ月後、美帆はテレビで、隅田公園でホームレスの住居に火がつけられ、
その襲撃に木刀で反撃したホームレスによって、
少年二人が殺害されたというニュースが報道されていることに気付き、
殺害したのはあのとき優司が木刀を渡したホームレスだと確信します。
その数日後、優司が美帆に会いに来ます。
美帆は、あんなにひどい目に合わせなくてもよかったと優司を非難。
それに対して、優司は少年たちは最初の襲撃に灯油入りのポリタンクを持ってきており、それによる放火をさせないためにも素人相手でも強めの暴行をしたとのこと。
ここから美帆と優司のやり取りが続きます。
そのやりとりの中で私の心にずっと残る優司の言葉がありますので、
原文そのまま紹介します。
「俺はガキん頃から、不良も年少上がりも嫌というほど見てきた。たとえ極道でも、筋の通ったやつは、あげな弱いものいじめは絶対にせん。ああいうガキどもは生まれついての外道よ。小さかときから犬や猫ばいたぶって殺すような変態野郎たい。世間の片隅で細々と生きとる人たちのことば虫けら扱いして、面白半分に焼き殺そうとするやつらが死ぬのは当たり前やろ。どうせあげな腐れたことする連中は、この先生きてもろくなことはせん。そいだけは俺は断言できるばい」
まとめ
淡々とストーリーを紹介し、最後に心に残った言葉を紹介させていただきました。
この言葉を持って、私が皆様にあえて伝えたいこともありません。
また、今回紹介したストーリーの一部は、本作の中核を担うような部分ではありません。
実際、他の方の感想を読んでみても心に残っている部分は別の部分でした。
ただ、それでも私はこの優司の言葉がずっと心に残っています。
もし、私の拙い記事からでも何かを感じて頂けましたら、
是非、本書を手にとってみてください。