捜査当局が拘置所の独居房を捜索し、被告の手紙などを押収する。こんな捜査の是非を問う裁判が大阪高裁であった。

 判決は一審に続いて「違法」との判断だった。

 公判を控えた被告が、拘置所で捜査側に知られず弁護人と連絡をとることは、一般に「秘密交通権」と呼ばれ、憲法に基づいている。高裁の判断は当然だ。捜査当局はこの判決を受け止め、二度とこうした捜査手法をとるべきではない。

 訴えていたのは、08年に起きた強盗事件で懲役10年が確定した男性(45)と弁護人だ。

 男性はパチンコ店への強盗容疑で09年に逮捕、起訴された。公判中の10年2月に否認に転じた。その5カ月後、男性が知人にアリバイ工作をした疑いがあるとして、大阪地検は大阪拘置所の独居房を捜索し、メモや手紙類を押収した。

 男性らは12年、「秘密交通権や防御権が侵害された」と国を訴え、一審の大阪地裁は捜査の違法性を認めた。

 高裁も一審と同じ理由で、違法捜査と断じている。

 「勾留中の被告の部屋には、公判に備えて自らを守るためのメモや資料が集まっている。押収されれば防御の準備が十分できなくなり、正当な裁判を受ける権利が損なわれる」

 「秘密交通権は憲法に基づく権利であり、捜査の必要性があったとしても、被告が受ける不利益の方が大きい」

 弁護方針が筒抜けになれば、公判で被告が不利になるのは明らかだ。刑事裁判には「検察と被告は対等」という原則がある。被告の行動に疑問が浮かんだとしても、独居房を捜索し、弁護士あての手紙やメモを押収することは許されない。

 一方で男性は、捜索令状を出した裁判官にも過失があると控訴していたが、大阪高裁は裁判官の過失は認めなかった。

 裁判官の責任が問われるのは「与えられた裁量を著しく逸脱した場合」で、今回はそれには当たらないとの理由だ。

 しかし違法と認定された捜査を認めたのは裁判官だ。

 男性の弁護人は判決後、「裁判所が身内をかばったとのそしりを免れ得ない」と語った。

 独居房捜索という異例の手法を慎重に判断したのか、裁判所も自省する必要がある。

 逮捕や勾留、捜索などの強制処分に踏み切る際、そのつど裁判所の令状を必要としているのは、行き過ぎた捜査による人権侵害を防ぐためだ。裁判官には「人権の砦(とりで)」として、自らの役割を果たしてもらいたい。