「ホールに段差があり、車いすの人は入れないと断られた」

 「どこからも情報が来ず、1週間、車中泊を続けた」

 熊本県を中心に続く震災で、命をつなぐはずの避難所に入れない障害者が続出している。

 一般の避難所では生活が難しい障害者や高齢者には、「福祉避難所」が用意されるはずだった。災害に備えて、あらかじめ市区町村と協定を結んだ学校や福祉施設などである。

 だが、震災の現実の前には、うまく機能しなかった。

 熊本市では、避難の際に手助けが要る「要支援者」の名簿に登録された人は約3万5千人いる。これに対し、福祉避難所の協定をもつ施設は176あったが、実際に受け入れる施設はなかなか増えなかった。

 ケアする人が被災して人手不足だったり、建物が壊れて水道も止まったりと、施設の環境が整わなかった事情がある。

 ボランティアを募り、22日までにやっと33カ所が開設した。だが入所者は80人超どまり。介助の余裕がなく場所の提供しかできない、と嘆く施設もある。

 福祉避難所に入れない障害者らにとって、長引く震災は深刻な生活苦をもたらす。安否確認も思うように進まなかった。

 こうした中、熊本市の熊本学園大の活動が注目されている。最大60人ほどの障害者や高齢者を受け入れ、存在感を示す。

 もともとはグラウンドが広域避難場所に指定されていただけだったが、相次ぐ強震で住民が集まり始めたため、4教室を住民に開放した。さらに校舎内の大ホールを要支援者専用にし、大学関係の介護福祉士や学生ボランティアらが24時間、避難者を見守る態勢をつくった。

 今月施行された障害者差別解消法は、「合理的配慮の提供」を公的機関の義務と定めている。障害者から社会的な障壁を取り除く要請があれば、無理ない範囲で対応する。その精神を実現する先駆的な試みだ。

 避難所づくりに携わった同大の教授2人は障害者・支援者団体と協力して「被災地障害者センター」も設けた。一つの避難所に集約するのではなく、各地の障害者に適切な情報を提供する拠点となり、元の生活に戻るまで必要な支援を続ける。

 避難者は今も8万人近い。その中で障害者らは、健常者と同じように暮らすのは難しい。要支援者名簿をもとに安否を確認する仕組みや、広域で福祉施設同士が職員を派遣し合う枠組みなどを平時から準備したい。日本中どこで起きるかわからない「次の災害」に備えて。