住民反対で断念11件、開設遅れ15件 本紙調査
近隣住民の反対などで保育所開設を断念した事例が2012年度以降、全国で少なくとも11件あったことが毎日新聞の調査で分かった。住民の要望を受け設計を変更するなどしたため開設が遅れたケースも15件あった。厚生労働省は待機児童解消に向け保育所などの整備を急いでおり、今後も同様の事例が出ることを懸念。各自治体に「早い段階から近隣住民に丁寧に説明し、途中経過も報告するなど理解を得られるよう努めてほしい」と求めている。
調査は、昨年4月1日現在で待機児童が50人以上いる自治体と政令市、東京23区の27都道府県124市区町村を対象に実施し、全市区町村から回答を得た。
断念した事例は、千葉県市川市をはじめ東京都杉並区▽品川区▽調布市▽神奈川県鎌倉市▽茅ケ崎市▽さいたま市▽名古屋市▽大阪府豊中市▽福岡市▽沖縄県北谷町−−の計11市区町で1件ずつ。開設予定は今年4月が4件、来年4月予定も1件あった。理由は「道幅が狭く送迎時に事故が起きないか不安」「子どもの声がうるさい」などと地域の反対が大半を占めた。
延期は東京都世田谷区が5件、横浜市2件。東京都目黒区▽台東区▽西東京市▽小平市▽調布市▽神奈川県茅ケ崎市▽兵庫県伊丹市▽沖縄県宜野湾市−−は各1件。施設に防音措置を講じるといった設計変更などで1〜3カ月遅れたケースが7件、予定地の変更など当初計画から1年以上遅れた事例は7件あった。昨年10月開設予定だった調布市の1カ所は、「開設時期は未定」という。
反対する住民への対応では「丁寧に説明し理解を求めるしかない」との意見が多い。
杉並区の担当者は「開園後も3カ月は園長が門に立ってあいさつし、近隣と良好な関係を築くことが必要だ」と話す。「着工まで近隣住民に説明せずもめてしまった」(東京都中野区)と対応を反省する声もあった。【まとめ・桐野耕一】