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 2002年に大阪市平野区で起きた母子殺害事件で死刑判決を受け、最高裁で破棄された後に無罪とされた大阪刑務所職員・森健充(たけみつ)被告(58)の差し戻し後の控訴審で、検察による凶器のDNA型鑑定の結果、被告と完全に一致する型は検出されなかったことがわかった。大阪高裁は22日、鑑定のため約3年間中断していた審理を6月に再開することを明らかにした。「新証拠」を求めた検察は厳しい立証を迫られそうだ。

 差し戻し後の控訴審は13年7月に高裁で始まった。被害女性(当時28)の絞殺に使われた犬の散歩用のひもなどの遺留品は起訴後に裁判所に保管され、検察は裁判所職員らが触った可能性があるとみて見送っていた鑑定が有罪立証のため不可欠と判断。ひものほか、女性と長男(当時1)の着衣、室内のソファ、バスマットのDNA型鑑定を高裁に請求し、認められた。

 関係者によると、検察側の依頼を受けた法医学者が鑑定した。その結果、凶器のひもからは性別が男性であることを示すDNA型が検出されたものの、森被告のものとは完全に一致せず、そのほかの遺留品も同様だったという。

 高裁の第2回公判は6月23日。鑑定人は今回の結果を鑑定書にまとめ、検察側が証拠提出する。検察はこの内容を踏まえ、公判で意見を示すとみられる。(阿部峻介)

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 〈大阪市平野区の母子殺害事件〉 2002年4月、マンション一室が全焼して女性と長男の遺体が見つかった。11月、女性の義父の森被告を大阪府警が逮捕。マンションの階段踊り場の灰皿にあったたばこの吸い殻72本のうち1本から被告のDNA型と一致する唾液(だえき)成分が検出され、一審の無期懲役、二審の死刑判決の決め手とされた。残る吸い殻は府警が紛失して問題に。最高裁は10年4月、吸い殻が事件以前に捨てられた可能性があるとして審理を差し戻し、大阪地裁は12年3月に無罪を言い渡した。