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イタリアの名匠エルマンノ・オルミ監督が80歳を過ぎて、自らの父に捧げた特別な映画「緑はよみがえる」が4月23日から、東京・神保町の岩波ホールで公開される。100年前の大戦で、若い兵士が体験した恐れや痛み、人間への問いかけを、未来へと語り継ぐ作品だ。4月末より全国で順次公開。
舞台は第一次世界大戦下の1917年冬、北イタリアのアルプス山脈の激戦地。イタリア軍とオーストリア軍が雪山に塹壕(ざんごう)を掘ってにらみ合い、戦況はこう着していた。外に出ればたちまち狙撃される劣悪な環境のなか、家族や恋人から送られてくる手紙を唯一の楽しみとする兵士たち。美しい銀世界とは対照的な、過酷な戦争の現実と自らの無力感に打ちのめされながらも、若い中尉は母への手紙をつづる。「愛する母さん、一番難しいのは、人を赦(ゆる)すことですが、人が人を赦せなければ人間とは何なのでしょうか」と。
78年に「木靴の樹」でカンヌ国際映画祭グランプリ、88年に「聖なる酔っぱらいの伝説」でヴェネチア国際映画祭金獅子賞を受賞するなど、60年以上にわたって映画に情熱を注ぐエルマンノ・オルミ監督。慈しみに満ちた眼差(まなざ)しで人間を見つめながらも、混迷を深める時代に根源的な問いを投げかける作品を送り出してきた。
7月で85歳となる監督が本作で描いたのは、自身の父親が100年前に従軍して体験した記憶が基になっている。幼い頃に聞かされた、出撃命令を待つ時間の恐ろしさや苦悩、そして、戦友を思い出して流した父の涙。それが監督の心から終生離れず、父に捧げる作品を作り上げた。
モノクロームを思わせる色調を落とした塹壕の静寂と、外に広がる冬山の美しい自然。劇中で歌われるナポリ民謡やテーマ曲が奏でる哀愁。戦地に送り込まれた若者たちの痛みと悲しみを通じて、戦争の愚かさとともに人間の命の尊さを描き出す。その物語は、憎しみの連鎖がいまだ続く現代においても、私たちの心に静かに訴えかけてくる。
岩波ホールでは29日と5月1日の午前11時の回の上映後、出演者のクラウディオ・サンタマリア(本年度イタリア・アカデミー賞主演男優賞)が舞台あいさつを行う予定。
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「緑はよみがえる」
http://www.moviola.jp/midori/
4月23日(土)より岩波ホールほか全国順次公開
配給:チャイルド・フィルム/ムヴィオラ
監督:エルマンノ・オルミ
撮影監督:ファビオ・オルミ
プロデューサー:ルイジ・ムシーニ、エリザベッタ・オルミ
出演:クラウディオ・サンタマリア(「海と大陸」)、アレッサンドロ・スペルドゥティ(「ジョルダーニ家の人々」)ほか
2014年/イタリア/76分/1:1.85/5.1ch/DCP
原題:「torneranno i prati」
提供:チャイルド・フィルム/ムヴィオラ/シネマクガフィン/朝日新聞社
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